№1124 少数株式の全量買取
会社株式の少数の株式を買い取りたいが、中々できないための制度として「全取得条項付種類株式」という制度がある(会社法108条Ⅰ項7号)。定款変更などによりこの少数株式の性質を変えてしまい、買い取っていく方法がある。敵対的買収への対抗策の一つにもなっている。
中小企業の場合、株主総会も開催しないまま長く放置していることが多い。あるいは、少数株主に通知もないまま株主総会議事録を適当に作っておくことがある。実際に会社法上の争いがあると株主総会が正式に開かれていないことが致命傷になることがある。
また、会社がどんどん成長してしまい、少数株とはいってもとんでもない価値をもつこともある。その段になっては資金が用意できず買うことなどできなくなることがある。例えば負債がたくさんあって株価が下がっているときに買い取るに限る。
ともかく、ある程度の会社ならば、株式をきちんと管理しておくことをお勧めする。
こうした場合、もし、特別多数(3分の2)を持っている場合には問題の少数株式を全部取得条項付種類株式制度を利用する道がある。これは会社法が認めた株式で、会社が取得手続き行えば、この種類株式を買い取ることができる(会社法108条1項7号)。その段取りは次の通りとなる。
① 株主総会を開催して種類株式発行可能なような定款変更を行う。
② 普通株式を全部取得条項付種類株式とする。
③ 種類株式を普通株式に変更する。
④ 経営者多数派には普通株式を割りあげ、少数株主には現金を渡す。
これはかなり技巧的なので、よほどきちんとした段取りを作っておかないとかえってまずい結果になる。
尚、東京地裁平成22年9月6日判決(判タ1334号117頁)は少数派排除目的というだけは全部取得条項付種類株式の発行は無効にはならないとしている。買取請求権が付与している以上、無効となるためには価格が低廉である必要があるとした。