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№1462 事業承継と種類株式の扱い

№1462 事業承継と種類株式の扱い

 事業承継は株式を譲渡する過程だ。しかし,中小企業の場合,株式に対する関心が低く株主構成も確定申告を見ないと分からないとか,株券がどうなっているか分からないとか,どこかに株主名簿があるはずだというような例が多い。

 円満承継では株式譲渡はもっぱら課税対策となる。暦年贈与,相続時精算課税,債権放棄とかいった一般的な手法を用いつつ,株価操作して株式を譲渡していく。生命保険,預金,死亡退職金など相続税や遺産分割のための資金を残すことを忘れないようにしておかなければならない。

 会社の支配権を一定残しつつ段階的に移して行く必要がある場合がある。
 たとえば,
  ★ 承継者との親子関係が必ずしも良好と言えない場合
  ★ 親族以外,たとえば専務などに会社を譲渡する場合
  ★ 承継者以外の相続人に株式を渡すような場合。

 こうした支配を段階的に移す必要がある場合には種類株式が有効だ
 種類株式というのは普通株式に対する言葉で,議決権が制限されたり,特別な配当があったりするような特別な扱いを受けた株式だ。種類株式を発行するためには定款変更を伴うため株主総会の特別決議が費用となる。

 ここで重要なのは議決権の制限は税務上株価評価に原則影響しない点だ。
 → 国税局回答(H.19.2.19)

 以下の議決権制限の株式を活用しつつ,段階的に株式を移譲することになる。また,資金調達に問題があって,どうしても跡取り以外の相続人に株を分けなければならない場合には,議決権を制限した上で株式を分けるという手法もある。

① 完全議決権制限株式
    「種類株式Aは,法令による別段の定めがある場合を除き,株主総会における議決権を有しない」

② 役員選任決議制限株式
         「当社が発行する優先株式は,法令に別段の定めが場合を除き,株主総会において愚痴の各号の議決事項について議決権を有しない。
      1 取締役の選任及び解任にかかる決議
      2 合併,株式交換,株式移転,会社分割又は営業譲渡の承認にかかる決議」

③ 拒否権付き株式(黄金株)
   株主総会決議に対して拒否権を与えられた種類株式(会社法108条2項8号)。代表取締役選任,取締役の選任,解任,合併,事業譲渡など拒否権の対象とすることができる。
   種類株式の一種なので,特別決議,登記が必要。

④ 属人株式
      株主ごとに議決権を定める場合(会社法109条2項,105条1項)
  「○○保有以外の普通株式については,議決権を有しない」
  「代表取締役である株主が,議決権の有するものとする」
   この場合,定款変更は必要だが,登記事項ではない。