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№2421 インターネット上の誹謗中傷

 Webを通じた宣伝は今やマスコミをしのぐ勢いになっている。その特徴は誰でも参加できるところにあり,食べログや旅ログなどの「口コミ」情報を見ながらお店を選ぶ人はかなり多い。そうした中で,誹謗中傷の書き込みがされると,事業者にとってはかなり痛手と映るのであるが,法的対応は難しい。

  

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Google上の誹謗中傷
 Googleマップに表示されている歯科医に対して,「予約があっても長時間待たされる」,「助手にレントゲン写真を撮らせている」「認定医を検索したが名前が出てこない」といった誹謗中傷が多数記載されていた。歯科医はその削除を求めて仮処分を申し立てた。これに対して裁判所は却下している(大阪地裁堺支部R1,12.27判時2465・2466号76頁)。

 

表現の自由
 表現の自由は精神的自由権といって憲法上高い価値を持つとされている。インターネットは誰でも表現者になれるという点で,歴史を変える画期的なシステムだが,一方でたちの悪い表現も許すことになった。この事例は,インターネットの功罪が問われた事件でもある。こうした難しい問題は個別に解決するよりほかはない。

 

いやなら登録をやめればいい?
 Googleで検索して,☆がたくさんついていれば,いい評判なのかなと考える。読む側は,これはあくまで「口コミ」で根拠が薄弱なのを理解しているとも言える。
 掲載する側,この場合歯科医院だが,「口コミ」宣伝効果を期待して掲載している。いいかげんな「評判」も掲載されるだろうということも覚悟の上だ。変な評判を載せられるのがいやなら登録をやめればいいのではないか。

 

プラットフォームの公共性
 しかし,Web広告全盛期となっている昨今,事業上無視することもできない。プラットフォームの公共性は年々高くなっている。こうした公共的性格にふさわしい自主的なコントロールも不可欠だろう。資格のない者がレントゲン写真を撮影しているというのは犯罪行為なので,こんな情報は削除されて当然だろうと思われる。人の心を著しく傷つけるコメントも削除されるべきだろう。

 

悪い評判は信じられやすい
 人は「損失回避の感情」というものがあるそうだ。「損をするくらいなら(得をする可能性が同じくらいでも)何もしないでおこう」という心理が働く。悪い評判は1つでも大きな影響力を持つ。そして,ひとたび悪い評判のレッテルが貼られると,なかなか収まらない。こうした自分の確信したことのみを信じる傾向を「確証性のバイアス」と呼ぶらしい。悪い情報に対する判断はこうした心理学的な効果も考慮すべきではないだろうか。この裁判の中ではこれは語られていない。 

 

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