名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№2460 老いた親の財産管理

 老いた母が施設にいます。認知症になり徐々に判断能力が低下しています。身体も弱まり外出もままなりません。銀行引き出しは本人を連れ出さなければならないことが多く、かなり面倒な状態になっています。よい対策はあるでしょうか。

  • 後見制度

後見制度(成年後見)は一つしかありません。後見人を選任するプロセスが複数あります。任意後見制度というのは本人の意思がしっかりしているうちに本人があらかじめ後見人を選任しておく制度です。法定後見は裁判所に選任して貰う制度です。

 

https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/

 

  • 後見制度のメリット

本人の意思能力がない場合、財産を動かすことができません。しかし、後見人が選任されれば、本人の財産を保全したり、本人の生活のために財産を使う必要がある場合には後見制度を活用すれば可能となります。

 

  • 後見制度のデメリット

後見制度では本人の財産を保護するために後見人は裁判所の監督をうけます。まず、財産目録を作成し、財産の状態について報告することが求められます。また、多額の預金の引き出し、不動産の処分などは原則として禁止され、実行するために裁判所の許可が必要です。つまり、財産管理に柔軟性がなく、使いづらい制度です。時には本人のためにならないほど硬直した管理となることがあります。私の場合は、非常に硬直した制度なのであまりお勧めしていません。

 

  • 信託制度

いわゆる個人信託が認められるようになり、これが活用される事例も増えています。これは本人の意思がまだしっかりしている場合、財産管理を信頼できる者に委ねる制度です。財産を特定し、管理の在り方を契約によって決めます。信託のための登記があり、これをしておくと受託者は不動産処分も可能となります。また、信託のための預金口座を開設してそこに預金を移せば受託者はかなり自由に預金を処理できます。委任との違いは名義自体も受託者に移る点です。

信託契約をうまく設計すれば本人が亡くなった場合の財産処理の在り方も決めることができます。

 

  • 信託制度のデメリット

信託制度は自由度が高いため、よほど信頼できる者に委託する必要があります。制度設計に専門性が要求されるため弁護士と協議する必要があります。

 

  • 委任契約

 これも本人の意思がしっかりしている場合に契約によって財産管理を委ねる方法です。本人が私の能力が低下しても財産管理を続けて欲しいと希望すれば、そのような契約を行うこともできます。老いた両親の管理を子供が行うことは普通に見受けられますが、これが正当化されるのは親が子に財産管理を委任している見ることができるからです。

 そのため、生前に委任契約を締結し、インターネットバンキングを活用し、本人名義のまま預金を引き出したり預けたりすります。

 

  • 意思能力の判断

子供が親の財産を管理する手法は上記の通りです。どのような手法を選択するかはご本人の意思能力の程度、管理すべき財産の内容によって左右されます。

意思能力の判断は預金を預けてよいかなどそこそこ応答できれば通常は意思能力があると判断されます。介護認定は判断能力を判定する有力な材料となります。しかし、絶対ではありません。

また、本来違うのですが、実務的には推定相続人(多くは子供ら)がどれほどまとまっているかによって、能力がある程度低下してもあるとして委任契約や信託契約を締結します。

 

  • 以上がご質問に対する答えとなりますが、一般論をお伝えしたにすぎません。何がベストの選択かは直接お会いして事情をお聞きして判断する必要があります。