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№2332 診療契約

№2332 診療契約

 意思・患者の関係は診療契約と呼ばれる契約だ。法律事情は準委任契約といって患者が医師に医療行為という事務を委任する関係に立つ。しかし、医療行為は「医療」という公的性格があるため特別な制約を受けることになる。

医師法上の制約

医療は仁術、高い専門性を有しかつ人の生命に関わる仕事であるため、医師が独占している。医師免許という形で医師法の制約を受け厚労省の管理下に置かれる。契約は本来自由だが医師法では応招義務といって、「正当な理由」がなければ治療を拒むことができない(医師法19条1項)。

 

 何が正当理由かは経営側からすると非常に難しい問題だ。問題あるからといって診療を拒絶することはなかなかできない。事態を正確に把握し、十分誠意を尽くしてなお病院運営に支障を来すのであればやむなく治療を続けられないとしなければならなくなる。

 

 一般企業ではクレーム対応に三現主義という言葉があり、現場で現物を見て現実を確認するという考え方がある。が、医療の現場でも通用する。患者のいる現場、現実に行われた行為をよく確認し、何事も事実に基づいて対応する必要がある。

 

社会保障上の制約

 世の中の大部分の医療は健康保険法や国民健康保険法に基づき社会保険によって行われている。保険診療報酬は保険者(全国健康保険協会健康保険組合連合会など)から保険医療機関(病院、医院、診療所など)に支払われる。

 

 保険者は被保険者(患者)に対して医療を現物給付することになっているが、保険医療機関がこれを支給する。建前から言えば診療期間は保険者から全額診療報酬が支払われることになる。しかし、現実には患者が3割負担するなど一部負担がある。この一部の負担金は医療機関から代理して徴収するという考え方になる。

 

 患者が一部負担金を支払わない場合、社会保険の建前からすれば本来治療期間が負担する筋合いはないので「善良なる管理者の注意」をもって請求してもなおも一部負担金を支払わない場合は保険者は一定の処分ができることになっている(健康保険法74条、国民健康保険法42条)。そして、健保法180条、国健法78条は地方税法を準用して徴収することができるとしている。しかし、実際にこれが発動されることはないようだ。

 

 このように、医療の世界の契約は特殊な部分があり、病院経営する者はこの点をよく理解しながら対応することになる。 

 

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