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№1943 保険医登録の取消

№1943 保険医登録の取消

 診療報酬の不正請求が発覚した場合、保険医登録の取消処分が行われることがある。診療報酬は開業医にとってはかなり安定した収入になるため、登録の取消がなされると病院経営にとってはかなり大きなダメージとなる。社会的な信用も失ってしまう。

 医療保険は健康保険法に基づいて運営されているが、登録された医師、歯科医師(法63条、65条)らによって本件が国民に給付されるしくみになっている。不正があれば取り消される(法81条)。処分者は厚生労働大臣であるが、権限は地方厚生局長に委任されている。

 保険医の指導などについては、「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査」(平成12年5月31日厚生省保険局長通知)というのがあり、診療報酬の不正請求、不正又は不当な診療を行った場合には取り消しできることになっている。このときに保険医協議会の諮問を受けることになっている。

 この場合次の場合は取り消しうる場合に相当する
 ① 保険医が、故意に不正又は不当な診療を行ったもの
 ② 重大な過失により、不正または不当な診療ををしばしば行ったもの

 保険診療の不正請求については次のような類型が存在する。

1. 付増請求
  実際に行っていない保険診療を付け増しする場合

2. 振替請求
  保険点数の高い別の診療に振り替えて診療録に不実記載する場合。

3. 二重請求
  自費診療の患者から料金を受領したにもかかわらず、カルテを偽造して再度請求する場合。

 保険登録が取り消されるというのはよほどの事情があると推定されるが、中には取り消された事例がある。これは勤務歯科医の保険医登録が抹消された事件であるが、データのコンピュータへの入力を意図的(故意に)行われたとは言えないとして処分を取り消した東京高裁H23. 5.31ウェストロー2011WLJPCA05316002)。

 この歯科医の事件は裁判所によって保険医登録抹消処分が取り消された事例であるが、さらに違法な処分によって名誉、信用が害されたとして国に対して損害賠償請求が行われ、1132万6880円の賠償請求が認められている(判時2151号43頁)。

 なお、判決文ではデータ改ざんなど不正入力したのは院長の可能性も否定できないとしている。

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