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№2441 業務委託契約における委託内容の明確化

 ビジネス法務8月号では表題の記事が掲載されている。業務委託とは文字通り特定の業務を行ってもらう契約なのだが,何を行ってもらうか不明確な場合がある。学生達には仕事を実現する契約が請負で,単なる事務つまり人の手足となって動くことが委任だと説明している。業務委託契約を「委任」であるとしている契約書は受託者が結果に対して責任を負いたくないタイプの契約である。しかし,委任でも成果を求めるタイプの契約が存在するため(民法648条の2)ことは単純ではない。

 

 委任契約は必ずしも成果は求められていない。契約書にはこんな具合に記載されることが少なくない。

 

「本契約は準委任契約であって,仕事の完成を目的とした請負契約ではない」

 

 確かにこんな風に記載されると,弁護士は無責任な契約と思ってしまう。

 成果が求められていなくても,誠実に「事務」つまり期待された行動を取ることは求められる。ビジネス法務記事ではこんな風に修正している。

 

「本契約は準委任契約であって,仕事の完成を目的とした請負契約ではない。Aは善良なる管理者の注意をもって本サービスを遂行する義務を負う」

 

 有償の委任契約では善管注意義務当たり前の内容なので,この条文は相手に対する注意喚起以上の意味を持たない。

 

委託内容の説明書を活用する

 ところで,いくら仕事の完成を目的とした契約ではないとしても,事業者は必ず委託業務の内容について説明を行っているはずである。お金の対価に何をしてくれるかについての打合せが必ず行われる。そこで,契約書には「提案書」を添付することで,委任事務の内容の明確化を図るという手段がある。

 

「本契約は準委任契約であって,仕事の完成を目的とした請負契約ではない。Aは善良なる管理者の注意をもって別紙「提案書」に定めた本サービスを遂行する義務を負う」

 

 こうした明確性を欠く業務委託契約の場合,権利者⇔義務者という単純な割り切りができない場合がある。当事者双方の共同作業によって事業が展開する場合も少なくない。たとえ,結果に対する責任を負わなくとも,役割に対する責任は負う。こうした観点からの契約条項の明確化も考えられる。