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№2112 信託はどこまで使えるか?

№2112 信託はどこまで使えるか?

 平成18年信託法が改正され(平成19年施行),信託がやりやすくなっている。事業承継についても徐々に信託が利用されるようになっており,どこまで使えるか模索が続いている状況だ。

 信託というのは不思議な制度で,自分の財産の一部を信託財産として分離する制度だ。分離された財産は信託の目的に従って運用されていく。伝統的には信託財産を第三者に預けるということになる。

 ふつうは,大手信託銀行など信託業務を行う会社に頼んできたのだが,今回の改正で一般の人にも利用しやすくなっている。たとえば,一回限りだが,家族に信託を頼んだり,第三者法人を設立してそこに財産管理をゆだねたりすることができる。

 事業承継は株式を跡取りに譲る作業が必要だ。その時の最大の問題は,次の3つの点に集約される。
   ① 支配権の継続
   ② 相続税対策
   ③ 他の相続人の対策

 これらに対応するための手法は次の3つだ。
   ① 生前贈与(生前の売却も含む)
   ② 遺言
   ③ 信託

 ところで,事業承継は時間との勝負だ。社長や会長が,認知症になったり,重い病気になったりして判断能力を失ったら何も対策できない。判断能力がしっかりしているときの対策として遺言や信託が使われる。

 遺言の場合,後から書き直しがきくので,もし,会長がだんだんボケてしまって,とんでもない人に遺言を書いてしまったら会社がめちゃくくちゃになってしまう。信託は後戻りがやりにくいので,有効な場合がある。

 信託は長期にわたって拘束できる。
 相続が発生してしまい,その後のことは生前贈与や遺言などで拘束することは難しい。その点,信託は長期にわたって拘束できるので依頼者の意図が生かされやすい。

 昨今,社団法人などを新たに設立して,この法人に財産を信託するという手法がよく使われるようだ。信託の場合,課税のプロセスが複雑である上,未知の部分が多い。よほど心して利用したないと,思わぬ損害を背負い込むことになる。私の考えでは,他の手法でやれるなら極力使わない方がよいという考えだ。

  信託を利用した事業承継スキームは有効な場合もあるので、弁護士や税理士として相談したうえで検討する必要がある。そのスキームのあらゆる場所で法的、税務的検討をやりつくし、万事遺漏のないように問題点を詰め切っておく必要がある。

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