そろそろ給与体系を変えてみようか・・・
組織は戦略に従う、企業の成長段階に従って組織を変えなければならない。そこで問題になるのが給料体系だ。中小企業の場合、成長が早いので中途採用が多く、給料の決め方がどうしても体系だってできない。しかし、ある時期からこんなことではいけないと思い始めることだろう。
給与体系を変えて不利益になると・・・
給料体系を変える場合、人によっては賃下げになってしまうので、どうしたものかと考えてしまう。不利益変更合には相応の理由がいる。判例は不利益を労働者に受忍させるだけの高度な理由が必要とかなりハードルをあげている(最判S43.12.25京北バス事件、最判S63.2.16大曲農協事件)。
労働契約法10条も・・・
①不利益の程度 ②変更の必要性 ③変更の相当性 ④交渉の経過
などを踏まえて決めるよう定めている。
ある大企業が年強序列型から成果主義型に就業規則を変更した。成果主義なので成果があがなければ給料は下がる。評価方法は非常に複雑で、職務基本給、役割貢献給、技能習熟給、特別加算額及び諸手当であるが、各給付についてさらに細かく細分化されている。このうち業績給できまる役割貢献給が賃金の51%を占める方式となった。
結果、業績で最低評価を受けた者がAは5500円下がり、Bは1万1000円下がった。一般労働者からするとこの変更は大きい。そこで、ABは就業規則の無効を争って提訴した。裁判所は本件変更を違法とし、減額部分相当額の賠償を認めた(H30.4.27判時2407号97頁)
変更された規則が無効になった訳ではありません
判決は就業規則の変更はグローバル化に伴って、賃金制度の国際的あり方も考慮すれば必要性もあった。また、能力が平均的と評価された場合は減額となるが、程度も小さいため違法はないとした。しかし、最低評価を受ける場合は不利益は大きく、1次評価と第2次評価する者が同じであることから公正さが担保されず、業績給部分は違法であると判決した。規則は無効とならず、減額分は不法行為という形で賠償責任を認めた。
年功序列から成果主義への変更について合理性が認められた事例
ハクスイテック事件 大阪高裁H13.8.30労判816号23頁
ノイズ研究所事件 東京高裁H18.6.22労判920号5頁
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