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№2237 マタニティハラスメント

№2237 マタニティハラスメント

経営者たるもの労務管理に習熟するべきだ 
妊娠出産を契機に職場で不当な圧力をかけたり,不利益扱いすることをマタニティハラスメントとして労働問題になる。今回は歯科クリニックの事例で,出産のために休業中であった女性労働者を退職扱いした事例だ。民間の開業医ではしばしばこうした乱暴な事例が見受けられる。医師といえども経営者なのだから,労務管理にもっと習熟するべきだ。東京地裁はこれを違法とした(H29.12.22判時2380.100)

退職の意思はないとされた
 LINEでは労働者は職場復帰ができないというようなやりとりをしていた。しかし,判決は就業規則上退職の意思表示は「書面」となっていることを考慮し,退職の意思が明示されていないと判断した。なお,退職は労働者の人生にとって重要なことであるから,意思の有無は慎重に判断するべきというのが判例である。

雇用均等法9条3項は妊娠,出産などによる不利益取り扱いを禁じている
 妊娠にともない退職が強要されることが多いことを考慮して判例は判断を慎重にしている(東京地裁立川支部H29.1.31労判1156.11)。最高裁も妊娠中の降格について,本人の同意があっても慎重に判断すべしとして違法,無効とした(最判H26.10.23判時2252.101)。この事例もこの判例の流れに沿っている。

賃金支払い義務について
 退職扱いが違法無効ということであれば,使用者の落ち度で労働できなかったということになるので賃金支払い義務が発生する。しかし,本件ではそもそも妊娠中なので働けず,使用者の落ち度という訳ではない。本件では賃金支払い義務は否定している。しかし,育児休業補償金相当額の支払いは認めている。

慰謝料の支払いも認められている
 慰謝料は200万円となっている。これは私の印象からは高額だ。判決は次のように述べている。
「いわゆるマタニティ・ハラスメントが社会問題になり,これを根絶すべき社会的要請も平成20年以降も年々高まっていることは公知であることにもかんがみると,原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料には金200万円を要するというべきである」

厚労省のとりくみ
 厚労省も妊娠,出産にかかわる差別をなくすため,いろいろ取り組みをしている。経営者としても勉強しておく必要がある。


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