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№2433 有期雇用が無期転換した場合の労働条件

 労働契約法18条では有期雇用の労働契約が更新されるなどして通算5年を超えた場合,労働者に無期雇用に転換する権利が与えられる。いわゆる非正規雇用では労働者の地位が不安定であるため,正規雇用になるチャンスを与えようというものだ。

 有期雇用から無期転換された場合,他の正規社員と同一になるのだろうか。

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労働契約法18条の無期転換は単に期間が有期から無期に変わっただけと考えます

 労働契約法18条は無期転換された場合であっても「有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件」とすると定めている。法律の条文からすれば無期転換は単に雇用期間の定めが無くなったにすぎないということになる。

 

無期転換に備えた就業規則雇用契約を用意する場合があります

 そこで,パートなど有期雇用の社員が多くある会社では無期転換した労働者の待遇につて正規労働者とは別に特別に就業規則を作っておく例がある。この就業規則契約社員就業規則と呼ばれたりする。さらに,無期転換された時に無期パート雇用契約を締結する場合もある。

 

同じく無期雇用なら「同一労働同一賃金」違反?

 この場合,同じ無期社員なのに異なった就業規則で待遇も違う場合,いわゆる「同一労働同一賃金」の原則に反し,「不合理な待遇」(パート有期法)として無効となる可能性があるのだろうか。

 同一労働同一賃金の問題についてはハマキョウレックス最高裁判決がある。最高裁は同一の仕事をしていたとしても,職責(責任の範囲)、異動(カバーできる職務の範囲)によって差異をもうけることは許される。たとえば、正規雇用の場合、長期雇用を前提としていて将来の昇格、昇給が想定されているうえ、広域異動が想定されているので、そうしたことを前提に基本給に差を設ける場合は合理的な違いであるとした。

 

無期雇用で同様の仕事をしていても労働条件の差が許容されることがあります 

 有期雇用が無期転換された場合の考え方は,有期雇用の時と同じ労働条件で,単に雇用期間のみが変更されたというものだ。無期転換されたとしても正社員と直ちに同じになるわけではない。ハマキョウレックス事件で最高裁が示した職責や異動の範囲に差がある場合には契約社員労働規則を当てはめても問題は無い(大阪地裁R2.11.25判時2487号97頁)。

 なお,この大阪地裁の事件はハマキョウレックス判決の後,同一の労働者が無期転換を行った上,待遇改善を求めて提起されたものである。

 

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