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№2339 職能給の変更が違法とされた事例

1. 給与体系を整備したい
  古い給与体系が年功序列であったり、あいまいなまま適当に決めていた場合、経営者はどこかで整理しなければいかんと思い続ける。しかし、どうしていいかわからない、法律はどのようになっているだろうか。

 

2. 年功序列から職能給に偏向した事例
  ある自動車部品会社(資本金2500億、売上3兆1000億円)は年功序列傾向の強い体型から職能給傾向の強い賃金体系に変更した。この変更に伴っては最も低いD評価になった場合1万1000円の減額になる。名古屋地裁岡崎支部はこの賃金体系の変更は不利益変更にあたるとした(H30.4.27判時2407号97頁)。

 

3. 労働条件の変更は慎重に
  就業規則に変更による賃金などの重要な労働条件の変更は、それを受忍させるだけの高度の必要性に基づいた合理性が必要だとされている(最判S4312.25判時542号14頁秋北バス事件、最判S63.2.16判時1278号147頁、大曲農業協同組合事件)。労働契約法10条も同様に定める。

 

4. 変更の必要性と合理性
  制度内容を変更するような場合、経営者に相当の裁量がある。本件事例では企業のグローバル化に伴い年功序列傾向のある体系では「実際の従業員の役割及び仕事価値と処遇及び賃金との間にかい離が生じており、人事管理及び雇用管理上の硬直化を招いている」から合理性も必要性もあるとしている。

 

5. 従業員の評価方法が適正でなければならない
  不利益変更にも一定の必要性、合理性を認めた判決ではあるが、不利益変更される側にしてみれば、「業績などについて、公正に評価されることが制度的に担保されている必要がある」とした。本件では最低のD評価の場合、Dの1次評価と2次評価する者が同じであること、労働者にとって評価の修正を求める機会を与えていなかったことは公正さを欠くとした。

 

6. 労働条件の不利益変更にあたって考慮するべき諸要素
  つまり、こういう点について注意を要する。

  ① 必要性、合理性について根拠を持つこと
  ② 就業規則の変更について労働者との間で適切な説明があり、了解を得ているか。
  ③ 変更後の人事評価制度に公正さが担保されていること。
  ④ 労働者に弁明や異議を言うチャンスを与えるべきこと。

 

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