名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№2263 難しい通関業務

№2263 難しい通関業務

通関業務が遅れると損失が大きい
 輸出入のトラブルの一つに通関業務の遅れがある。何らか事情で通関手続が遅れると商品の受領が遅れてしまう。この場合,コンテナ・ヤードにおける無料の保管期間(フリータイム)の経過後に発生する滞貨保管料(デマレージ)が発生する。デマレージは受領延滞に伴う懲罰的な保管料なので長引くほど多額になってしまう。

 なお,デマレージを誰が負担するかは契約書に明示しておく必要がある。

ある食品会社の場合
 ある食料品会社(A社)は韓国よりミネラルウォーターを輸入したが,B社通関手続が遅れたために多額のデマレージが発生した上,商品そのものも売れなくなってしまった。食料品の場合,賞味期限などがあって急速に商品価値を失うため通関手続の遅れはかなり痛手となる。判決文によればA社には5700万円の損害が出たとA社は主張した。そして,この損害はB社の業務ミスによるものとして損害賠償請求を行った。

通関手続の遅れは輸入業者の責任とされた
 B社は通関の遅れはA社の書類の不備などA社側の事情によるものである。B社としてはデマレージまで立て替えていたのだから,通関手続が伸びたことによって生じた諸費用を支払ってほしいと請求した。判決はB社の主張を認め,A社に1200万円ほどの支払いを命じている(東京地裁H27.1.1,2015WLJPCA01198002)。

通関手続の遅れの原因
 双方の言い分はともかく,実務的にいってこの判決で注目するべきはどうして通関手続が遅れてしまったかという点にある。輸出入実務でのありがちなトラブルなので知っておいて損はない。

① 税関官署の窓口に設置されている窓口電子申告端末により、NACC(輸出入・港湾関連情報処理システム)を利用した以下の電子手続をしてなかった。

② 到達通知書(arrival notice)が遅れたために商業荷送状(commercial invoice)の修正が必要になるなど,通関書類の準備が遅れた。

③ 食品等輸入のモニタリング検査の対象となり,その際に事前申告本数(9600本)より480本多かったことが判明したため,改めて輸入許可を受けなければならなかった。

④ 輸入許可申告をしたところ,X線検査の対象となり,輸入許可が遅れた。

⑤ 通関手続き中に納品先に引き取りを拒否され,納品先が見つからない状況になった。

⑥ 輸入document imageの貨物は唐辛子であり,食物検疫等を受ける必要があったため,輸入許可を得るまでに日数を要した。

名古屋E&J法律事務所へのお問い合わせはこちら
                               → http://www.green-justice.com/business/index.htm
イメージ 1