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№1419 「必ず発注がある」と騙された事例

№1419 「必ず発注がある」と騙された事例

 事業提携によって新規事業を始める場合,相手に対する信頼関係を築きつつ事業を始める。たとえば数億の投資を行って設備を引き受けるような場合にはきちんと弁護士と相談しつつ事業提携契約を結んでいくことが必要だ。

 事案は運輸関係業者がダイオキシン類無害化事業に参入した事例だ(東京地方裁判所平成19年(ワ)第6764号,平成21年7月31日判決)。

 B社はA社に対して,公共団体の焼却場解体に伴ってダイオキシン類無害化の発注があることを見込まれる,ついては業務提携してダイオキシン無害化事業を始めようと持ちかけられた。業務提携にあたって,B社が飛島建設などから仕事を受注し,A社が設備を用意して生産するという役割分担が行われた。

 A社は業務提携契約に基づいてダイオキシン無害化装置「イーデス」を2億6000万円かけて導入した。B社の説明によるとこの投資は3年で回収できるということだった。

 しかし,実際にはダイオキシン無害化の委託はほとんど無く,この投資は全く無駄に終わってしまった。A社はB社を相手取って,約束と違う,年数件の案件があるはずではないのかと訴えを提起した。

 判決はではB社は仕事が非常に少ないであろう事は分かっていたのだからその旨説明するべきであったとした。しかし,うかつにB社を信じたA社にも落ち度があるから過失相殺6割を差し引き,1億7600万円の支払いを命じた。

 契約締結に際して誠実で無ければならないという法的なルールなルールが存在する。この契約に際して相手を騙してはいけないというルールに基づきB社に説明義務を認めたのである。商売には駆け引きはつきものだ。黙っていることも許されることがある。しかし,多額の投資もとめるような場合には誠実に必要な情報を提供する義務はある。

 この事案ではダイオキシン無害化事業にかかわる情報がB社側にのみある点,重視されB社に説明責任を認めたと思われる。

 ところで,この事案時系列を追っていくときわめて短期に事業参入を決めている。
 平成13年12月中旬ころ、A社とB社とが知り合う。
 平成14年2月1日には「イーデス」を2億9715万円を発注した。
 平成14年3月27日に業務提携契約を締結した。

 いろいろ事情があろうが,わずか数ヶ月多額の投資を行っている。余りにも急ぎすぎているということになるだろう。この時に業務提携に向けて弁護士を関与させていれば,弁護士はいくつかの警告を発していただろうし,業務提携契約においても資本回収可能性にかかわる条項を入れていたかも知れない。こういう時に顧問弁護士は非常に重要な役割を果たすことになる。

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