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№1803 うつ病と企業の責任

№1803 うつ病と企業の責任

 過重労働からうつ病になった場合、会社が労災として扱うばかりでなく、安全配慮義務違反を理由にした損害賠償請求義務も発生する場合がある。労災としてのうつ病から仕事ができない場合には解雇することは原則としてできない。

 うつ病のような精神疾患は目に見えないため会社が知ることが難しいことがある。そのため、会社からすれば自分のコンディションについて申告してもらわなければ分からないという問題点がある。こうした点からうつ病に対応できるような就業規則を整備している会社も少なくない。この種の案件は社労士もよく勉強しているはずだから要請すれば就業規則を整備してくれるはずだ。

 この社員の「申告」「告知」の問題であるが、個人のプライバシーにかかわる問題であるため、単純ではない。この点、平成26年最高裁判決は次のように述べている。

 「使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っているところ」「労働者本人からの積極的な申告が期待しがたいことを前提とした上で、必要に応じてその業務を軽減をするなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるというべきである」(H26.3.24).

 この判例の事例は、経験のない仕事を任された上、かなりの長時間労働を強いらていた。本人は体調不良を理由に業務量等の軽減を求めていたが上司の了解を得られなかった。こうした過酷な状況下にいては、まず、職場として配慮しなければならないとしたのである。

 この判決の重要な点は、「労働者の申告がなくても」配慮しなければ労災となり得るといしたところだ。

 もし、これが会社が何らかの配慮を示し、労働者に対して事情を聴取していたとしたら結果は異なったかもしれない。私の考えでは使用者は職場の安全に対して第1次的な責任を負うものと思われる。しかし、労働者についても労働を提供する義務があることや、職場の安全は労使双方の協力関係が必要な場合もあるのだから、判決も別の展開になっていた可能性がある。

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