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№2254 デマレージの負担

№2254 デマレージの負担

商品が港で停滞してしまった
 商品を輸出入する場合,商品が港で停滞してしまうことある。通関手続の遅れ,L/C,インボイスなどの必要書類の記載ミス,アライバルノーティス(arrival notice)の間違い,貿易品売買の契約上のトラブルなどで積荷を受け取らないなど原因はいろいろある。

港(保税区域)での停滞にはペナルティーがあります
 この停滞期間に対してはデマレージ(DEMURRAGE)と言われる滞船料が発生し,船会社に支払わなければならない。停滞すれば停滞するほど一日当たりの金額は大きくなる。このデマレージは意外に大きな金額になると言われており,時には契約上の利益を超えてしまうこともある。

そのため,契約上誰が負担するかは大きな問題だ
 契約上想定外の事故の発生は法律上「危険」という言葉で表す。デマレージは契約上想定外のイレギュラーは事象なので,契約上は「危険」による損失を誰が負担するかという問題から考えることになる。

貿易ではインコタームズが取引条件モデルをつくっています
 貿易には危険はつきもので,昔から契約関係について整理されてきた。こうした問題は現在では国際商工会議所(ICC)がインコタームズとして工場渡条件から仕向地持込渡(関税込み)条件までの13種類の定型取引条件を定めている。これはあくまでモデルなので契約書には例えば,「インコタームズ2010,CIPに従う」というような文言を入れて初めて意味を持つ。

例えば貿易条件CIPの場合
 危険負担は積荷港のコンテナヤードへの搬入で買主に移る。売主としてはコンテナまで運んでしまえば物を移転させる義務はひとまず終わったという考え方だ。

 一方,CIPの場合,運送費及び運送中の保険料を売主が負担する。仕向地つなり輸入国の港まで続く。この港で買主が引き取った段階まで続く。そうなると,CIPの場合,デマレージの負担は売主が負うことになりそうだ。

デマレージは買主負担と契約書で明示する必要があります
 しかし,物の受け取りというのは専ら買主の問題だ。船が出てしまった後では売主のコントロールの効かない領域の問題ということになる。また,CIPがデマレージの負担まで定めているかというそうでもない。

 私の考えでは仕向地でのできごとであるデマレージについては,原則として買主にリスクを負担してもらうのがよいと思う。もちろん,貿易書類が整えられなかったなどの売主側の問題がある場合には,売主が負担することになるだろう。

こんな契約文言はどうでしょうか
 契約の文言としては「滞船料は買主の負担とする。但し,滞船料発生原因に売主の責めに帰すべき事情がある場合は売主の負担とする。」というのがよいのではないかと思う。

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