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№2253 普通解雇の要件

№2253 普通解雇の要件

労働契約法16条の制約
 正規雇用の場合,雇用期間の定めのない労働契約とされており,解雇の通知によって契約は終了する。懲戒解雇は制裁の意味がありきわめて厳しい要件のもと認められるので,原則行ってはならない。一般的には普通解雇と言われる解雇が問題とされている。
 
 解雇する側もされる側もつらい決断だ。労働者の生活がかかっているので簡単ではない。労働契約法16条は解雇理由の「合理性」,「相当性」といった判断基準を示している。これでは一般的過ぎるのでもう少し判例を分析する必要がある。

たとえば,反抗的態度,独善的対応による解雇はどうだろうか。

1. 核心となる解雇事由の存在
  積年問題行動が繰り返され,あるとき決定的な問題が生じる。たとえば
 ① 特定の業務処理を怠り,しかも,それが報告されていなかった。
 ② ミスが原因で会社に対して多額の損失を招いた。
 ③ 上司に反抗的対応など職場の規律を乱す重大な行為が発生した

2. 核心となる解雇事由の背後には長年にわたる問題の山積がある
  多くは教育的対応を行い,いろいろ工夫したり,注意したりしているが,治らない。教育的配慮が何もないのにいきなり処分にすることは原則許されない。
 ① 過去に上司の指示に従わない,無視する,反抗的対応がある
 ② 職場に対する熱意の欠如からくる作業能率の低下
 ③ 職場内外で上司,会社に対する誹謗中傷を繰り返す
 ④ 報連相がなく,うその報告,重大事項の秘匿が繰り返される
 ⑤ 被害者意識が強く,常に自分を正当化して教育効果があがらない
   改善計画書を提出させても具体性がない
 ⑥ 他人の失敗を追求する,時に容赦しない攻撃的態度に出る
 ⑦ 意味なく会議を混乱させたり,不必要な発言で士気を低下させる
 ⑧ 指示されても仕事の範囲外として断る,非協力的。
   やる意義を感じないなどと独自の判断からサボる。

3. 解雇とすることが相当であるか,他の処分で代替できないか
 ① 他に同様事例があって,不平等な取り扱いがないか
 ② 他の軽い処分で済ませられる問題ではないか
 ③ 配置換えなど他の方法で処理できないか。

4. 解雇による不利益を緩和する措置をとっているか
 ① 退職金の上乗せがあるか
 ② 他の就職先を斡旋しているか
 ③ 予告をどの程度しているか

5. しかるべき手続に沿っているか
 ① 就業規則内にそった譴責措置などを実施しているか
 ② コンプライアンス委員会などがあるか
 ③ 弁明の機会が与えられているか



ちなみに東京地裁の裁判例では解雇の判断基準についてこんな風に述べている。

 解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときは無効である(労働契約法16条)。
  勤務態度の不良等のため業務に適さないこと(以下「業務不適格」という。)が解雇の理由になりうることは無論であるが,解雇は労働契約関係が解消されて労働者が職を失うという重大な結果をもたらすことにかんがみれば,解雇の客観的に合理的な理由となるためには,労働契約に基づいて要求される業務の内容,業務不適格の具体的な内容,態様,程度,原因,経過,反復継続性などを総合して,業務不適格が労働契約を継続し難い程度のものであることを要し,その程度に至らない軽度又は一時的な業務不適格では足りないというべきである。また,その総合判断においては,労働者の改善見込みの有無,程度,使用者の改善措置等による解雇回避の可能性,それまでの解雇回避の努力等の事情も考慮されるべきである。被告就業規則61条2号,9号も労働契約を継続し難い程度の業務不適格及びこれに準じる事由を解雇事由として定めるものと解される。もっとも,制裁罰の性質を有し,「懲戒」の名が付されることで,労働者の名誉を著しく侵害し,退職金支給の特別な制限を伴うことがあるため,制裁としての労働関係からの排除の正当化を要する懲戒解雇に比べ,普通解雇は,民法627条1項に基づく解約の申入れで,整理解雇や私傷病を原因とする労働能力喪失による解雇のように労働者の帰責事由を前提としない類型をも含むもので,懲戒解雇のような特別な不利益を伴わないから,業務不適格が懲戒解雇に値する非違行為と認められないときでも,普通解雇に要求される客観的に合理的な理由には十分なこともありうる。

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