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№2252 固定資産税を争って勝訴した事例

№2252 固定資産税を争って勝訴した事例

固定資産税を争って勝訴した事例
 一般に納税訴訟は難しい事件であるが,固定資産税,都市計画税の争いは比較的争いやすい。ある企業は評価額を争ったおかげで1442万7921円を東京都から取り戻した(東京地裁H29.1.30.判タ1452号239頁)。

 事案は自社の土地が4方,道路に面していると評価したのだが,間違っていた。一方の道路と本件土地の間に隙間があったようだ。ともかく,1方に面していなかったことが判明したため,東京都は誤りを認めて固定資産税などを還付している。

取られ過ぎた税金を国家賠償によって取り戻した
 修正してもらった分はよいにしても,修正したのは平成20年度以降の課税部分だけだった。そこで,原告は平成19年より前の払い過ぎ部分も返してほしいと裁判を起こしたのだ。

 課税の常識から言うと,税金には争い方法が定められているので,それ以外の方法で争ってはいけないことになる。地方税法も審査の手続を定めている(法432条1項)。不服審査は期限が定められていて,これを過ぎると争うことができない。

 しかし,国家賠償いうもう一つ別の手段がある。税法でだめなら,国家賠償法という別ルートが用意されてる。税法がだめなのに国家賠償法ならできるというのでは何のために税法があるかわからない。2つもルートを作っていいか長く論争があったが,最高裁は2つルートがあってもよいと判示した(最判H22.6.3判タ1326号99頁)。

固定資産税は申告とは関係なく課税される
 普通,税金は申告によって行われるが,固定資産税は申告がいらない。役所がちゃんと調べて賦課処分しなければならない。実地調査だってしなければならない。役所の責任で間違った土地価格を判断したのであれば賠償しなければならない。固定資産税の特徴は課税庁と納税者との役割分担がない点が特徴的だ。当然過失相殺など問題にならない。

 ※ 小規模宅地に関する同様の事例としていくつか地裁判例がある。
   浦和地裁H4.2.24判タ803号76頁
   東京地裁H28.1.27判タ1441号122頁
   東京地裁H8.4.28判タ1433号177頁

 ※ 固定資産の評価額(地方税法349条1項,341条5号,同条6号)は総務大臣により定められる(法388条1項)。市町村の職員はこの方式に従って,いろいろな手段をもちいて「公正な価格」を決めることになっている(法403条2項)。この価格決定は自治体が毎年調査しなければならないとされ,3年の基準年度ごとに評価額の見直しが行われている(法409条)。東京都では「東京都固定資産(土地)評価事務取扱要領」を定めて評価額を決めている。

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