2002年土壌汚染対策法(「土対法」)が制定された結果、土地売買では土壌汚染がセンシティブな課題になっている。土地売買契約においても土壌汚染に関する契約条項が様々な形で工夫されている。土壌汚染調査もけっこうお金がかかるため省略したり、土壌汚染調査も絶対ではないためこともあり、後から汚染が確認されて問題になることが少なくない。売買契約では土壌汚染についての定めは慎重になったほうがよい。
たとえば、こんな条項があったりする。
1 本物件には,土壌汚染対策法第3条第1項が定める有害物質使用特定施設に係る工場でないものが設置されていたため,売主は,同工場由来の土壌汚染が存在し得ないことを理由に,土壌汚染の調査を行わず,土壌汚染の調査は,買主の負担により実施するものとする。
2 土壌汚染調査の結果,環境省の指定基準に適合しない土壌汚染があった場合,買主は汚染の態様及び範囲並びに汚染対策の方法及び費用を売主に明示し,売主は汚染対策費用を買主に支払うものとし,買主は自ら汚染対策を行うものとする。
契約条文の問題点
この条文の最大の問題は自然由来の汚染、たとえばヒ素、鉛などについて考慮されていない点だ。
契約書では「売主は,同工場由来の土壌汚染が存在し得ないことを理由に、土壌汚染の調査を行わず」と記載されている。有害物質は何も工場から出てくるだけとは限らない。自然状態でも存在する。自然由来の汚染があった場合、この契約条項では曖昧さを残す。
① この契約条項では工場由来の汚染はないという前提の契約で、自然由来の汚染については責任を負わないとも解釈できる。
② 一方でおよそ汚染があれば責任を負うとも解釈できる。
③ さらにやっかいなことに2017年土対法改正により自然由来の汚染についてもそこそこの規制が存在することになった。そのため、土対法規制対象になる土壌汚染については売主は責任を負うとも解釈できる。
契約書はさらに明確化が求められる
基本的には当事者間で契約された際の土地利用の目的、土地代金など考慮しながら契約が解釈されることだろう。契約書の中に土壌汚染ついての保証の範囲を明示しておくことが賢明だ。
① 工場由来の汚染のみ品質を保証し対応する
② およそ汚染に対応する。
③ 事前調査の範囲でないことが確認された以上汚染への対応はない。
④ 事後調査で汚染ができてきた場合でも保証する。
などなど