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№2229 土地売買と土壌汚染

№2229 土地売買と土壌汚染

 不動産取引において土壌汚染にかかわる問題は少なくない。環境基準は土壌汚染に関する基準を設けている。購入した土地から環境基準に反するような有害物質が検出された場合,土壌汚染があるために不動産価値が下がったと評価し,賠償責任の問題が生じる。そのため,土壌汚染の可能性ある土地については,一定の説明責任が生じることになる。

環境基準と土壌汚染
  土壌汚染があった場合,揮発,埃とともに拡散,地下に浸透などの経路によって有害物質に暴露される危険が生じる。法律上は環境基準が定められ,水質汚濁防止法や土壌汚染対策法によって規制されている。

環境基準に違反していなくても欠陥土地とされることがある
 マンション予定地の地中から建物のコンクリート基礎やオイル類といった障害物が発見されたために処理費用や工期の遅れを防止するための費用について,約4600万円の賠償を認めた事例がある(東京地裁H14.9.27)。この事件では環境基準に反する状況にはなかったが,マンション用地という性質上,除去などの処理が必要と判断された。

環境基準に違反していても欠陥土地とされない場合がある
 売買不動産に環境基準を超えるフッ素が存在していた事例で,最高裁はフッ素が規制の対象となったのは売買契約締結後であるため,締結時は有害と認識されていない,という理由で欠陥とは認めなかった(H22,6.1)。

自然由来の汚染物質
 有害物質は天然にも存在する。住宅造成目的で売買された土地に環境基準を超えるヒ素があった事例がある。買主は除去費用などの賠償を売主に求めた。契約書には環境基準を超える有害物質があった場合に責任を負うとの条項があった。しかし,環境基準は人為的汚染を想定しているため,判決は自然由来のヒ素で汚染されている場合は賠償責任を負わないとした(東京地裁H23.7.11判時2161号69頁)。

 しかし,平成22年に環境省通達が変更され,自然由来の土壌汚染にも土壌汚染対策法を適用するとしたため,現時点だとこの判例は通用しないかもしれない。

土壌汚染と不動産の瑕疵は難しい判断
 これらの判例は土壌汚染が土地売買上の欠陥を構成するかは難しい問題を含んでいることを示す。何が欠陥にあたるかは当事者の意図が重要なことは言うまでも無い。

 汚染がある土壌でもほしかったということであれば,汚染=欠陥とういうことは言えない。たとえ,廃棄物が埋まっていても,基礎がうまくでき,宅地として問題なければ欠陥とは言わない。

 その当事者の意図について最高裁は「契約締結当時の取引観念をしんしゃくして」判断するという。

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