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№2447 「公益通報」の考え方

 社内に不正がある場合、それを社員が指摘すれば経営者としては正しい経営に貢献したと喜ばなければならないが、そうでもないところがこの問題の難しいところだ。不正行為というと、経営者としては愉快な話ではない。ここからパワハラ問題に発展することも少なくない。


 逆に公益通報として独りよがりの正義を振り回されてしまうと社内秩序が混乱してしまう。ひどい例になると不正行為をネタに退職金の増額を求めたりするゆすりたかりの類いもある。応じてくれなければ役所にいいつけると脅かす例だ。
 だから、経営者としては公益通報保護法への正確な理解は必要なことだ。

 

公益通報とは何だろうか
 公益通報とは次のように説明されている(法2条)。
「労働者等(労働者、退職から 1 年以内の退職者、役員。公務員を含む。)が、②不正の目的でなく、③ 役務提供先等について、④「通報対象事実」が、⑤ 生じ又はまさに生じようとしている旨を、⑥「通報先」に通報すること」
 この通報者は派遣労働者派遣労働者から役務の提供を受けた事業者も含んでいる。

 

通報行為とは
 事業者内部の機関や所轄の行政機関に通報することをいう。 
事業者内部や行政機関に通報したのでは不利益な取り扱いを受ける可能性があったり、証拠の隠滅がされような場合、公益通報するなと口止めされるような場合には、報道機関や消費者団体などに通報する場合もこの法律の保護の対象となる。

 

通報者の保護
 通報者に対しては解雇や雇い止めなど不利益行為は禁じられている。通報を理由に労働者派遣契約の解除も許されない。
 公益通報は「密告」などといやしいことのように捉えられているふしが、法律は会社のコンプライアンスを実現するもので、むしろ英雄的と見るべきと考えている。

 

誤った事実の通報
 そうは言っても通報が真実とは限らない。裁判例の中には対象事実が真実と考えられるような相当の理由がある場合にも不利益取り扱いを禁じる場合を示している。
 しかし、誤った通報により会社の信用が傷ついたり、社内に不和や不安を招くこともある。こうした場合の通報者の処分は非常に難しいものがある。

 

通報制度の乱用例もある
 通報制度を利用して、解雇が公益通報者保護法違反で無効であると争う例もかなり多い。例えば、パワハラなど不当労働行為を労働局に通報したことによって解雇された、内部通報が原因による解雇で無効であるというような主張だ。

 

判例の考え方
 解雇と公益通報者保護法の関係を扱った判例は多い。何らかの不当労働行為、労災などがある場合、労働基準局への通報行為が伴うものであるが、多くはその通報を理由にした解雇であるいった主張になる。


 判例は解雇の理由を詳細に分析した上で、通報と解雇、その他の因果関係があるかを判断している。従って、企業がこうした問題に直面した場合、はっきり公益通報制度を意識した対応が必要だ。つまり、当該不利益処分に正当な理由があり、公益通報とは全く別問題の事柄であると割り切ることができる材料を用意する必要がある。