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№1882 労働災害中は解雇できない?

№1882 労働災害中は解雇できない?

 労働基準法19条は労働災害のため休養中は解雇できないとしている。
 正確には「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間」は「解雇してはならない」と定めている。

 この解雇制限はかなり厳しくて、法律に特別な定めがある場合以外には一切解雇できないとなる。懲戒解雇も解雇なのでこれもできない。そのため、対象者が労災と称して休業してしまうとかなりやっかいなことになる。

 たとえば、うつ病がそうだ。懲戒事由があって調査に入るとうつ病と称して調査義務に応じない、出勤しない、労災認定が出ると解雇できないと反論してくることがある。これはかなり不合理なことだ。会社の資産を横領した疑いがある場合でも、その調査がうつ病の原因となるとして休んでしまうと解雇できないという理屈が出てくる。

 こうした問題について判例を調べてみると問題になっている事例が意外に少ない。しかし、懲戒解雇が全くできないかと言うとそうでもない。たとえば、懲戒解雇はできないとしても、それを懲戒解雇の予告と読み替えることについては可能性がある。つまり、法律の制限があるため解雇はできないが、労災回復後30日したら解雇するという予告だ。

 そもそも労災そのものが不確かかもしれない。
 うつ病の場合、主治医は基本的に本人の主訴をもとに診断していく。眠れない、気になってどきどきする、ゆううつな気持ちになるなど抽象的に表現することも可能だ。いろいろ自分の気にかかることを言えばよい。うつ病適応障害というの診断はかなり簡単に出せてしまう。

 労基法19条の記載は「休養中」という制限がついている。仮病で出勤しないのであれば休養中とは言えない。軽い労働災害で本来出勤できるのに出勤しないのであれば休養中とは言えない。

 もともと、労基法19条は労働者保護の規定であるが、たとえば労働災害が自分の犯罪行為、たとえば横領とか背任とかが原因して心配になりうつ病になってしまっているような場合であれば、それは業務に起因して生じた災害というようりは自分の非違行為に起因して生じた災害とも言いうる。

 また、権利の濫用といって、自分の違法な原因でうつ病になっておきながら自分の保護を求めるのは権利の濫用だ。クリーンハンドの原則といって自分の手が汚いのを置いておいて自分の権利ばかり主張するというのは許されないという原則に抵触する。ただ、労働法は公法的規制という側面もあるので単純に権利の濫用が使えるかどうかはかなり慎重を要する。

 なお、労災の原因として使用者に安全配慮義務違反があるような場合は労基法19条にかかわりなく解除ができない場合があるので注意を要する。

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