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№2197 並行輸入と商標権侵害

№2197 並行輸入と商標権侵害

商標によって,出所がわかり品質が保証されます
 商標とは商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)とされている。商標法に基づき登録されて商標権として強い保護が与えられている。

 「コカ・コーラ」という商標によって,そのコーラがザ コカコーラ カンパニーの商品であることがわかるし,商品の品質もわかる。つまり,商標によって商品の出所が表示される(出所表示機能)。また,商標をいることによって一般消費者はその商品の品質を信用することになる(品質保証機能)。

日本の正規ディーラーを通さず輸入することを並行輸入といいます
 外国企業のブランドを日本の輸入代理店が販売する場合がある。この場合,輸入代理店は日本における商標権を持つ。このような場合,代理店を通さず,直接海外からブランド品を輸入して日本国内で販売できるだろうか。この海外の商品を輸入する行為が並行輸入行為と呼ばれるものだ。

並行輸入は原則として商標権侵害となります
 平行輸入は日本で独占権を骨抜きにしてしまうので日本代理店は被害を受ける。最高裁は,並行輸入を原則として商標権侵害行為になるとしている(フレッドペリー事件H15.2.27判時1817号33頁)。

しかし,違法とされない場合もあります
 しかし,並行輸入業者が外国の商標権者の承諾のもと適法に輸入したような,いわゆる真正並行輸入のような場合には商標権侵害とはならない場合がある。その要件は次の通りである。

① 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであること。
② 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであること。
③ 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価されること。

最高裁の事例は違法とされました
 最高裁の事例は,フレッドペリー並行輸入業者が違法に中国で製造されていたブランド品を輸入したため,輸入行為は商標権侵害当たるとされた。これは①の要件に反する。

 消費者からすれば,同一ブランドなので同一の流通経路で売られた商品であると考えるので,商品の出所を誤認させることになる。これは②の要件に反する。

 違法に中国で製造されたというのであれば,必ずしも品質が維持されているという保証はないので③の要件に反することになる。

最近並行輸入に違法性はないとする判決が出されました
 一方,最近,イタリア「NEONERO」ブランドのアクセサリー並行輸入事件について,最高裁の上記要件を満たすとして実質的違法性は無いとした判決が出ている(知財高裁H30.2.7判時2371号99頁)。これは上告されており,判決が注目される事件だ。

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