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№1431 私生活の犯罪行為と懲戒

№1431 私生活の犯罪行為と懲戒

 労働契約上,社員は社内の秩序を維持する義務がある。私生活で痴漢,窃盗といった犯罪行為を行った場合に会社は処分できるだろうか。

 まず,重要なことは懲戒権を行使する場合には「あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」(最判H15.10.10)。就業規則がなければ労働契約上なんらかの措置をとって置く必要がある。

 社員が拘束されるのは労働契約の範囲のことであるから,私生活上のことを理由に何か処分するということはできない。しかし,私生活上のこととは言え,それが社会問題になったり,職場内で問題になったりして職場の信用や秩序を乱すようであれば処分の対象となり得る(日本鋼管事件,最判S49.3.15)。

 そのため,新聞報道されたかどうかは無視できない要素となる。ギャンブルなどで逮捕されたりするとやはり職場の風紀を乱すことになるだろう。痴漢などについては犯行の程度と処分の重さが考慮されて処分が決まる。

 軽い痴漢行為のために職場を解雇するというのは行き過ぎとなる場合がある。解雇は有効であるとしても,退職金を全額削るという処分が違法であるとする判決もある(小田急電鉄事件,東京高裁H15.12.11判時1853.145頁)。

 処分の種類には戒告,譴責,減給,出勤停止,降格,諭旨解雇,懲戒解雇などいろいろあるが,就業規則に沿って処分していくことになるだろう。もちろん,事実関係の把握は不可欠であるから,きちんと本人からも事情を聞いておく必要がある。

 重大な問題については顧問弁護士と相談する必要がある。特に本人からの聞き取りについては,どのようにするべきかをあらかじめ打ち合わせておくことは有益だと思う。