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№2451 懲戒解雇のプロセス

 解雇には普通解雇と懲戒解雇とがある。懲戒解雇は就業規則上の懲戒事由に該当する場合で、「処罰」の意味合いがある。就業規則には一般的には懲戒事由とともに懲戒手続きが定めてある。

 

懲戒解雇は最も重い懲戒

 懲戒解雇は懲戒の中でも最も重いもので、懲戒事由の適用に当たっても非違行為の程度がそれなりに重い場合でなければならない。軽いミスを繰り返すぐらいでは解雇はできない。軽いミスでも業務に支障を与え、繰り返し教育の機会を与え、懲戒が繰り返されているような場合には懲戒解雇はあり得る話だ。

 

懲戒手続きが適正でなければならない

 懲戒事由があったとしても、適正な手続きが必要となる。本人に解雇事由を告げ、弁明の機会を与えた上でその真偽を確かめる必要がある。非違行為が著しく会社の秩序や信用、利益に重大な影響を及ぼす場合には即時解雇ということもあり得るが、やはり懲戒解雇となると手続きをきちんとしておく必要があるだろう。

 

大阪地裁の事例はかなり丁寧な対応をしている

 例えば配転命令を拒否したことを理由とする懲戒解雇が正当とされた大阪地裁の事例ではどのように手続きがされていたであろうか(大阪地裁R3.11.29判時2533号38頁)。
 この事例は業績不振部門を閉鎖し、当該部門の職員を大阪市から川崎市に配転命令がされた事例だ。配点は労働者の生活に影響与える場合があるため濫用は許されず、最高裁が一定の基準を示している(最判小二S61.7.14判決)。大阪地裁は配転命令は業務上の必要性もあり不法な目的もないものと判断した。

 

この事例では配転命令にあたっていくつもの説明が行われている。
①事業場閉鎖について全従業員あての説明会、イントラネットによる説明資料の公開
②3回にわたる個別面談による配転後の仕事についての説明
③シニアマネージャーが「転勤困難と申し出ている理由」をお聞きしたいと何度もメールを送っている(原告がこのメールに対して「社会人としての礼節を欠いた」暴言で返答している。)


 
 大阪地裁の事例は管理者側がかなり忍耐強く対応を繰り返し、それでも配転命令に従わなかった事例で、原告に大きな問題があった事例ではある。しかし、懲戒解雇ではこのような忍耐強い説明の繰り返しは避けられない。