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№1899 職場内の不倫と労働問題

 職場内で不倫行為については企業は対応に困る。

 職場内で露骨な態度をとられると社内の雰囲気を悪くする。特に女性社員からすれば許せない人たちとうつるかもしれない。
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 不倫行為は法律上は「不貞行為」と呼ばれる。夫婦関係は法的保護されているので不貞行為は違法と判断されている。やはり社会的には許されないことだ。しかし、当の本人からはプライベートな問題で会社には迷惑をかけていないなどというもっともらしい抗弁がくるのでやっかいだ。

 就業規則からすれば、従業員が「素行不良で職場の風紀・秩序を乱した」場合に懲戒をなし得る旨を定めていることがほとんで、これを理由に処分することは可能と言える。不倫の事実が社内でわかるほどであれば、「職場の風紀・秩序を乱した」ということになり、場合によっては処分の対象となる。

 まずは、調査ということで、社内でいくつかの情報を聴取していく。さらには会社は本人を呼んで不貞行為ががあるのかと尋ねることになる。この段階で「プライベートな問題」という抗弁が出てくる。調査行為は社内で「不倫」という情報を広めてしまう効果もあるので慎重を要することは言うまでも無い。

 判例上は授産施設の事例であるが  「本件施設内における両名の不貞又はこれに類する不適切な行為等の有無について,事情を聴取したことは,本件施設の管理及び本件施設内における職員間の規律維持に関わることであって,被控訴人Y1会の業務として,違法,不当なものであるとまではいえない。」としている(高松高裁判決平成28年1月21日)。

 本人の弁明はたいていは否定する。場合によっては「プライベートな問題」なので答えたくありませんと言うだろう。いくつかの事情を伝えそれでも弁明しないとなると社員の対応としては悪質さが増す。会社によってはお金はかかるが探偵を利用する場合もある。高くつくが職場の秩序には変えられないと判断するような場合があるのだ。

 次に不倫が発覚した場合の処置が問題だ。不倫で懲戒解雇までできるのはかなり限られる。たとえば学校の指導者と受講生、長距離バスの運転手とバスガイドなど社内秩序に重大な影響を与え、会社の信用も失墜してしまうような場合となる。
 
 たとえば、自動車教習所のスクールバス運転手が教習生の女性と不貞関係になったという事例でも解雇を認めなかった(名古屋地裁決定昭和56年 7月10日)
 
 やはり、反省文を書かせるとか、職場の配置換えをするとか、諭旨にとどめるとか一定の段階を経て、なおも社内で見えるような動きをするようであればレベルを上げていく必要があるだろう。

 平成元年12月27日旭川地裁決定では「家庭を壊すのはよくないし、二人の交際は不倫であって、いくら仕事に支障がなくとも従業員に示しがつかず、私が笑い者になるからとにかく会社を辞めて欲しい。」というので解雇した事例であるが、職場の秩序を乱した具体的疎明がないとして解雇を認めなかった。

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