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№1827 懲戒事由と退職金

№1827 懲戒事由と退職金

 懲戒事由がある場合に退職金は支払わないというのは半ば常識化しているが、労働法の世界では単純ではない。

 退職金の支払いは労働契約の一部なので、労働契約上退職金を支払う根拠がなければ退職金支払い義務は発生しない。退職金が問題となる事例は就労規則で退職金規程が存在するか、労働契約上退職金を約束したような場合だ。

1. 懲戒解雇の場合

 懲戒解雇の場合、退職金を支払わないという条項があるのが一般的だ。たとえば、「懲戒解雇となった場合には,第○○条ないし第○○条の規定により求められる退職手当は支給されない。」という規定などが定められている。

 ところで、退職金というのは法律的に言うと、功労及び給料の後払いの性格を持つ。そのため、退職金を全額支給しないとするためには、当該非違行為がそれまでの長期にわたる功労を無にするようなできごとでなければならない。

 たとえば、個人的な犯罪行為で懲戒解雇とする場合であっても、給料の後払的性格を考慮すると一部は支払われることになる。就業規則上懲戒解雇の場合は支払わないとされていたとしてもなおも支払われる余地を残す。

2. 退職後、懲戒処分前に非違行為が発覚したような場合
  たとえば懲戒解雇になることを察知して辞表を出したような場合はどうだろうか。一般的には退職者には懲戒ということがない。そのため非違行為があったというだけで退職金を支払わなくてもよくなるという訳でもない。

    これも退職金規程をきちんと整備しておく必要がある。
  「退職手当が支給(中略)される前に在職期間における非違行為が発覚し,退職日までに懲戒処分が確定されない場合であって,かつ,その行為が懲戒解雇又は諭旨解雇にあたると思料される場合は,その非違行為について,退職後においても懲戒に相当するか否か審査され,その結果,懲戒解雇又は諭旨解雇に相当することとなる場合には,第○項及び第○項と同様,それぞれ退職手当の支給を制限される。」

  ただ、経過から見て退職金を支払うことが相当で無い場合があり、場合によって規程が無くとも支払いを拒絶できる場合がある。

3. 退職金を支払ってしまったあとに非違行為が発覚した場合
  この場合も退職金規程にさだめておかないと取り戻すことはできない。企業によっては発覚後は8割返還するとかいろいろ定めている。

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