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№1826 ストーリーとしての競争戦略

№1826 ストーリーとしての競争戦略

 「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済)を読み始めた。長いので2日間続けて読んでも半分ぐらいだ。筆者の楠木建先生は一橋大学大学院教授だ。マイケル・ポーターの基本的考えから説き起こしている。

 筆者は、経営戦略上の様々な分析ツールだけでは不十分だといい、さらに経営資源全体の持続的利益の創出という最終ゴールに向けてとりまとめていくストーリーが必要だという。

 人、もの、金、情報、知識、全ての経営資源がシステム化され、競争戦略実現に「最適」(フィット)であるべきだというのはポーターの議論だ。特定の戦略目標に向けて有機的に連携し最大効果を上げていくというのであるから、そこには当然一定の筋立てというのがある。

 この筋立てがストーリーということになるが、筆者は常に「動的」であることを意識している。「動的」というのは経営資源全体というシステムが最終目標(持続的利益)に向けて常に組み立てられ、活動していく姿をイメージしている。

 サウスウェスト航空は徹底したコスト削減で他社と勝負するために、機内サービスを廃止し、座席指定を廃止し、短距離国内便に特化し、二次航空乗り入れのみとし、ボーンイング737だけに機首を絞り、などなど様々な施策を講じた。その全ては、コスト優位を築くために特化されている。これはコスト優位というストーリーが全社の全てにおいて実行されるということを意味している。

 この場合、筆者が特に意識しているのが「一貫性」と「互換効果(interactive effect)」だ。二次空港の利用は着陸料だけでなく、飛行機が混み合わないだけに待機時間を節約する。座席指定廃止は座席指定に伴う管理コストを削減し、かつ、乗り降りの時間を節約する。多くの施策がたくさんの効果をもたらし相互につながる状況を互換効果というらしい。

 さて、この本でもっとも興味深いことは、このような有機的なシステムの構築ははじめから計画されていたわけではないとしている点だ。「偶然のチャンスや自然な成り行きや当座の打ち手がストーリーの契機となったとしても」、一つ一つの契機に、一貫した一連の流れを作ろうとしたところが重要だという。

「優れた戦略家は、機会や脅威を受けてある特定のアクションをとるときに、それがストーリー全体の文脈でどのような意味を持つのか、それを取り巻く他の構成要素とどのように連動し、競争優位の構築や維持にとってどのようなインパクトを持っているのかを深く考えます。」

 そして、「微調整の繰り返しで戦略ストリーは徐々に練り上げられていくものです。」つまり、ぶれない軸が組織に競争優位の要素を蓄積し、蓄積が全資源の強い統合という結果を実現するということですかね。最初はただの偶然と思っていたことが、会社にとっては大きな機会となり、今日の成功を生んだという話はよくあるところだ。これは理念に基づいた戦略の一貫性によって実現されている。 


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