名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№1829 コンセプト

№1829 コンセプト

 「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社)を少しずつ読んでいる。本書のキーワードは「動的」であることと「一貫性」だと思う。

 仕入れ、販売、同業者との競争など競争戦略分析のツールは様々ある。業界での位置づけやマーケッティング、組織戦略など考えるべき事は多い。
 しかし、企業は一度にたくさんのことはできない。現場情報を取り入れながら試行錯誤を繰り返して一つの体系を作り上げていく。この時に、一貫したコンセプトで日々組立て、積み重ねていって「動的」に企業活動の体系を作り上げていくことが重要だと言っている。一つのことで貫き、結果として大きな体系とさらなる可能性を作っていく。

 そのため、まずは「コンセプト」が重要だという。
 コンセプトというのは概念と訳されるが、私たちは行動全体を貫く基本概念のように使われている。武田信玄が「人は城」と言ったのも領地経営の基本概念だ。筆者はこの基本概念を正確に定めて事業展開する必要を説いている。

 たとえば、スターバックスは「第三の場所」つまり、職場、家庭、以外にくつろげる第三の場所というコンセプトで経営を一貫させた。「アスクル」は「明日来る」というコンセプトで小規模事務所を対象にした事務用品の販売を始めた。ホットペッパーは「生活圏」という日常生活空間の範囲での情報誌、「狭域情報誌」というコンセプトで成功している。

 つまり、顧客が誰であるか正確に狙いを定め、顧客が何を求めているかを正確にし、それに正確に対応した商品やサービスを提供することが必要だ。これは事業活動総体として実現されなければならない。そのときの基本的な理念、つまりコンセプトが明確になっている必要がある。コンセプトが明確になると、あとはそれに応じて事業や組織を展開する。

 この時、単なる方法論とコンセプトをはき違える企業は淘汰される。たとえば、インターネット事業を単に「ダイレクト」というだけでは方法論でしかない。顧客が求めているものがストレートに表現されていない。アマゾンはこれに対して「顧客の選択を援助する」というコンセプトで、双方向の利点を活かした顧客とのコミュニケーションを重視した。このようにダイレクトというだけでは顧客が何を求めていたかは掘り下げられていない。

 こうして、筆者はコンセプトの重要性を説いている。もっとも、斬新で、有効なコンセプトがひらめくまでが大変だ。筆者は人間の本性に根ざすことを強調している。マイケルポーターは自社が属する業界の定義や顧客の定義の過程で見つかるという。難しいテーマだが事業のアイディアというのは日常の中で何かおもしろいことやろうという意欲なかで踏み出せるのだろう。

 コンセプト=おもしろいストーリー、筆者がわざわざストーリーと呼ぶのは事業の定義に際して創造的な「おもしろさ」や、事業展開の中で思考が深められていく過程を重視しているからだろう。

名古屋E&J法律事務所へのお問い合わせはこちら
                 → http://www.green-justice.com/business/index.html  

イメージ 1