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№1904 懲戒解雇のプロセス

№1904 懲戒解雇のプロセス

 「解雇」は労働者にとっては経済的にも社会的にも大きな打撃を与える。人生設計を大きく違ってきてしまうことだろう。特に懲戒解雇となると退職金が出ないの普通だし、失業保険においても「重責解雇」として扱われ会社都合解雇による利益を得られない。

 そのため、労働契約法15条は懲戒解雇については非常に制限的だ。その取り扱いは刑事裁判に似ていると言って良い。懲戒解雇とする場合は懲戒事由を説明しなければならないし、懲戒行為は原則就業規則に沿ったものである必要がある。

 その上で、①懲戒事由の合理性、相当性、②適正手続きが求められる。

 東京地裁平成23年 5月27日の判決は適正に懲戒解雇が行われたと認定した事例だ。解雇されて当然な単純な事例だが、こんな風なんだと理解する上では参考になる。

【事案】
 スーパーマーケットに勤務していた原告が、賃金台帳の開示などをめぐって課長口論してきた際に、女性客がたばこを購入してきた。原告は課長との口論で興奮していたせいか、女性客に対しても八つ当たりして「大声で,『くそばばあ。』,『このブス』と罵声を浴びせた。」。

 さらに謝罪するよう課長に指示されても「『私は謝らない。このブス』などと暴言を繰り返した。さらに女性客が従業員としての自覚はあるのかと問われても「『なによ,ブス。あんたなんか客じゃない。一見の客なんて,客として認めない。もう来るな。』などと暴言を吐いた。」あげくの果てに傘を投げつけ、スタンガンを持ちだすよなどと暴れたらしい。

【解雇の手続き】
 当然、解雇事由となるが、この会社で行われた手続きは判決文によると次の通りだ。

① 事情聴取と弁明の機会
 店長は関係者及びその場に立ち会わせた者から事情を聴取した。その様子は録音されている。こんな具合だ。おそらく、あらかじめ質問事項を整理しておいて、順番に聞き取っている。

 ・・・・・(お客様に)「言い返した言葉って覚えていますか?」との質問に対し,「・・・日頃からねえ,えーと,何ていうの,ストレス溜まってたから,その場で,何て言ったか,自分で言ったのは,うん,(間)何だと思ってるのっていうようなことは言ったと思います。」と,更に(一見の客なんか,客として認めないと言ったことに)「ついてはそういったお話しとかされましたか,覚えてらっしゃいますか。」との質問に対して,「「一見」というニュアンスの言葉を使った可能性はあります。」・・・・・・・

② 賞罰委員会
 被告(会社)は,平成21年8月17日,回議された賞罰審議委員会において,「原告の行為は,落ち度のない客に対して暴言を吐き,そのうち威嚇行為を行うなどサービス業として極めて態度が悪いこと,原告は何ら事実を認めず,反省の情も全く見られず,情状として汲むべき点も全く見当たらないこと」を理由として,被告のアクティブキャップ就業規則60条3号,6号及び12号並びに同第61条1項6号に基づき,原告を懲戒解雇にすることを決定した。

③ 懲戒解雇の通知
 平成21年8月20日,被告は,原告に対し,上記懲罰審議委員会の結果を報告する必要があるとして出社を命じたが,原告が,これに応じなかったことから,同月25日,原告に対し,「懲戒解雇通知」を発送し,本件懲戒解雇の意思表示をし,同通知は,同月28日,原告に送達された。
 被告は,懲罰委員会規則12条の規定に従って,上記懲戒解雇通知書が原告に送達された平成21年8月28日,原告に対し,本件懲戒解雇に異議がある場合には5日間の異議申立期間内に異議申立書を被告に郵送するよう説明した。しかし上記期間内に原告は,上記異議申立書を被告に提出しなかった。

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