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№660 昭和の女

№660 昭和の女
 うちのばあさんは「女の心得」のようなものを強く考えている。
 家には決まった秩序がある、夫はたてるもの、妻は銃後にあって守るものといった感覚がある。
 
 おもしろいのは、ばあさんの家、つまり私の実家でテーブルで座る席が決まっていることだ。先日も横浜から妹が来ていて、テーブルに座ってばあさんとおしゃべりをしていた。そこに私がリビングに入ってきて、「なんだ、来ていたのか。」と声をかけた。すると、ばあさんはいきなり妹に「あんた、そこをどきなさい。そこは、おじいさんが座っていた場所だからタカアキが座らないかん。」と無理矢理に妹をどかしてしまった。
 
 こんなことはよくある。

 
 長男のひーちゃんは名古屋に帰ると、ばあさんのところにご機嫌伺いにいかせられる。どうもそのたびに「あんたは籠橋家を背負わなかん。」と名古屋弁で言われるらしい。
  先祖は大事にしなければならず、ひーちゃんは墓参りの作法を知っておかなければならない。私だって知らないのにひーちゃんには到底わからない。
 
 母の愛は深い。
 私は毎週日曜日に実家に帰って、ばあさんのごきげんをうかがうのだが、今日は仕事が入って、朝しか行く時間が確保できなかった。その旨、ばあさんに伝えたが、後になって電話がかかってきた。妻が出たのだが、「タカアキは家を支える大事な体だから、無理をさせたらいかん。今日は来んでもいい。」と妻に伝えたらしい。
 まるで、銃後の支えた岸壁の母だ。