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№487 「解雇」、どうしたらいいか

№487 「解雇」、どうしたらいいか
 解雇というのは社長にとっては、ある意味タブーだ。
 労働者にとって雇用は生活と切り離せない。解雇によって人生に大きな深刻な影響を受ける。安易に解雇をもちだすべきではない。法律上も簡単に解雇できない仕組みになっている。
 
 中小企業家同友会では「労使見解」というのを発表している。いかなる場合にも雇用に向けて全力投球するのが経営者の責任であると宣言している。経営者たる者、経営に責任を持つ者である。解雇は経営責任の懈怠であるという考えである。だから、経営者は経営の向上に向けてあらゆる努力をしなければならない。
 
 しかし、やはり解雇しなければならない場合だってある。
 
 最近こんな事例の相談を受けた。
 支店である社員を採用したものの、わがままで、威張っていた。そのため、たった一人の社員のために職場の雰囲気が一気に悪くなった。パートさんはこの社員の下では働けないなどと大ブーイングを起こし始めた。支店長も統率力を失い、学級崩壊のような様相を呈し始めた。そこで、社長はこの社員の解雇を支店長に命じたのである。
 
 ところがだ、支店長は、この社員に支店の業績が悪いから辞めてくれないかと切り出した。つまり、本人には会社側の問題であって、本人には罪がないかのように切り出したのだ。話はうまく進むかに見えた。本人は退職し、会社から去った。ところが、後日、雇用上の地位保全を求めて労働審判が請求された。
 
 本来、整理解雇には有名な整理解雇の4要件というのがある。平たく言えば、解雇回避のために経営上の努力をしきらないとだめだということだ。もともと、人間関係の悪化が主な理由なのだから、整理解雇の要件を問題にすることは、なかなか難しい。案の定、地位保全の審判結果が出てしまった。会社は今後、裁判で争わなければならないし、負ければ未払い賃金を払わなければならない。
 
 この事件の問題点は、解雇の問題をあいまいにして、支店長が適当なことを言って辞めさせようとしたことだ。本人に問題があるのだから、本人の問題を率直に指摘し、話し合い、改善すればよし、改善の見込みがなければ辞めてもらうまで説得する必要がある。
 
 そもそも、このような「学級崩壊」を招く前に支店長は手を打つべきだったのであるが、それをしなかった問題、それを支店長の上司が知らなかった問題、会社がこうした事態を想定した対応策を準備していなかった問題など、前提としていろいろ考えるべきことはある。
 
 ともかく、納得が大切で、社員とはとことん話し合い、その上で、留まるかどうか決めてもらう。退職ということであれば、辞表を出してもらうことが必要だ。解雇は一方的に辞めさせることで、辞表は合意による労働契約の解消である。意味が全く異なる。