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№379 契約できると思ったのに

№379 契約できると思ったのに
「必ず注文するからラインを開けといてくれ。」
「わかりました。」
ということで、製造に必要な期間として3ヶ月間ラインをあけた。その間注文がとれない。

「本社の決済が長引いているもう少し待ってくれ。」
「大丈夫か。」
「本社の決済は確実にもらえる。大丈夫だ。」

 しかし、結局、注文はなかった。担当者は謝罪したが、この時期、突然注文が無くなるのは企業にとって痛い。

 契約をするかどうかは企業の自由だ。利がないと考えれば取引はしない。相手が契約に入るかどうかは、お互い相手の情報をきちっと入手し、自分の判断で考えなければいけない。もちろん、自由競争の社会では、ある程度の駆け引きは許される。

 しかし、商取引の社会はお互いの信頼を基礎にできあがっている。いつでも裏切られることが許されれば、取引社会の円滑は望めないだろう。こうした場合、法律は「契約締結上の過失」という考え方で臨んでいる。

 これは、相手がその提供した情報を信頼して、契約の準備行為に入った場合に、そうした信頼、期待を保護しようという考え方だ。民法には信義誠実の原則(民法1条)というのがあって、相手の期待を保護する条文がある。

 たとえば、不動産を購入するという言葉を期待して、内装工事を行うことがある。お宅が購入していただけるなら内装しておきますよと約束するような場合だ。買うから内装しておいてくれというやりとりがあった場合、工事をしたのに結局契約しなければ反故にした相手は賠償責任を負う。

 結局、ここでの問題点は、お互い、どんな情報をどんな形で提供したか、相手はそれを信頼したのか、契約できないかもしれないと考えるのか、契約交渉過程ででやりとりした情報の内容を分析することになる。