№1743 「電子契約」って?
インターネットによる取引はいまや当たり前になっている。私たちの世界ではこれを電子商取引と呼んでいる。広告はもちろん、契約の申し込みや代金の支払い、商品の発送もインターネットを通じて行われてしまう。
インターネットはインターネットは瞬時に情報交換がされる上、交流の範囲がどこまでも広がるため独特のトラブルになっている。
【事業者が表示を間違えた場合】
ヤフーショッピングにおいて、パソコン1台2787円と表示してしまった事件がある。これはDVDの値段と間違って表示したのであるが、すでにある会社に3台注文されてしまった。業者はまちがった表示だとして契約は成立していないとしたが、この会社は契約が成立しているとして3台分の代金34万5000円の賠償請求した。
この事件でややこしいのは次の点だ。
① 単なる広告とは違い、インターネットを通じて申し込むことができた。新聞チラシの場合は値段が表示してあっても、すぐに申し込みできない。
② 申し込みに対してヤフーは注文確認の返信メールを発送している。
③ 業者がヤフーショッピングモールの内容を直接操作することはできない。
ともかく、注文確認があったというのであれば契約成立と言えないこともない。しかし、東京地裁は、ヤフーショッピングモールにおいても、お店の陳列とは変わるところがなく、申し込んだからといってすぐに契約が成立するわけではないとした(東京地裁H17.9.2判時1922号105頁)。
しかし、これは事業者にとってある意味ラッキーだった事件のように思う。
たとえば、返信メールに「ご注文ありがとうございました。」など、何の保留もなく注文を受け付けたような内容だったらどうなるか分からない。サイトの構成によってはすぐに注文を受けるような内容の場合があるかもしれない。
【注文側が表示を間違える場合】
逆に客が注文を間違える場合もある。
インターネットの場合、打ち間違えがよくある。間違って承諾してしまったとか、金額を誤って送ってしまったとか、いろいろある。民法上は「錯誤」という難しい議論があるが、電子メールには「電子消費者契約法」という法律がある。
この法律3条には「電子契約」という定義が有り、業者の表示した手順に従って契約を締結する場合、「勘違い」による入力について契約無効を原則としている(法3条)。私たちはこれを「錯誤」の特則とよんでいる。
よく、いかがわしいサイトで順番に入力してつい申し込んでしまうような場合ですね。
この場合は注文者の意思を何らかの方法によって十分確認しておく必要がある。有名サイトはそのようにしている。