名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№253 「さぶろく」協定

№253 「さぶろく」協定
 三六協定をご存じだろうか。
病院などでは三六協定すらないまま,勤務医などを残業させている例もある。

 労基法によると労働時間が法定されている。それによると,1日の労働時間は8時間(32条2項),1週間に40時間を超えて働かせてはいけない(32条1項)。週に1回は休日を設けなければならないし(35条1項),休憩時間も必要だ(34条1項)。

 この原則に従えば,午前9時から午後5時が所定労働時間だとしたら,残業は1時間しか許されない。それ以上,残業を指示すると罰則が待っている。

 これを緩和するのが労基法36条である。労働組合,職場代表者と協定を結べば,法律上の労働時間の制約を超えて,職務を命じることができる。この協定が三六協定(さぶろくきょうてい)だ。大部分の企業は,三六協定を締結して労基署に届出ており,残業が正当化されている。

 ところで,三六協定を結べば,いくらでも働かせることができるだろうか。労基法36条2項は,厚生労働大臣が労働時間の基準を定めることができるとしている。これによると,労働時間は週15時間まで,1ヶ月45時間,年360時間までとしている。

 360時間だって?
 月平均は35時間,週平均は4週とした場合は週8時間ちょっと,1日あたりにすると1.5時間強。
 うちの残業はこんなものじゃないよ。などという企業はけっこうある。

 ところがだ,厚生労働大臣の基準は,行政指導の基準であって,法的拘束力を持たないとされている。つまり,この基準を超える届出も法律上は有効であるし,労基署は届出を受理しなければならない。

 日赤病院の和歌山センターでは,月に180時間,週にすれば40時間以上の時間外勤務を認めた三六協定が締結されているそうだ(過労死弁護団報告)。

 三六協定は世界でも例のない条文で,この条文のために労基法上の時間制約は意味をなくす。悪名高いと言われても仕方がない。