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№1877 有期雇用契約の更新

№1877 有期雇用契約の更新

【高齢者雇用安定法のお話】
 高年齢者雇用安定法が改正されて、経営者としては65歳まで従業員の雇用を確保しなければならなくなった。雇用確保が義務づけられているが、定年制を延長する必要は無い。会社としては定年後退職し、再雇用制度を用意すれば良いことになっている。

 この再雇用制度は継続雇用制度と呼ばれている。建前から言えば、原則として5年間を上限として継続雇用が求められることになる。継続雇用制度を利用する場合、ほとんどが半年ないしは1年の短期雇用が何回か更新されるというのが実態ではないだろうか。

【有期雇用更新のお話】
 有期雇用契約の場合、原則として3年間より長期の有期を定めることはできない(労基法14条1項)。あまり長いと正社員と区別がつかなくなってしまい、正社員の地位が脅かされてしまうからだ。

 こうして有期雇用の「更新」が繰り返されるだが、やっかいなことに、労基法14条2項というのがあって、有期雇用契約を締結する場合に期間満了における「更新」のあり方を明示しなければならない。つまり、定年退職後に継続雇用を行う場合、期間終了後、経営者としてどう処遇するかあらかじめ明示しろというのだ。

 選択肢は①更新する、②更新しない、③場合によっては更新するの3つしかない。③の場合には更新するしないの基準をきちんと明示しろというのが法律の立場だ。これは厚労省通達「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」平成15年厚生労働省告示第357号が定めている。


 判断基準と言ってもわかりにくいので厚労省はパンフレットを作ってさらに解説を加えている。それによると、こんな感じのことを書けばよいそうだ。

     「 契約の更新は次により判断する。
    契約期間満了時の業務量、勤務成績・態度、能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況」

労基法に違反してしまった場合のお話】
 更新のあり方について明示が無い場合は労基法14条2項に違反することになるが、違反になった場合について直ちに有期雇用が無効となるわけではない。この場合は雇止め自体に正当事由があるか否かによって決せられることになる(最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決・民集28巻5号927頁、最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁)。

 最高裁は当該労働契約の内容及び締結の状況、更新の状況及び手続、就業の実態、業務の内容(業務の恒常性、臨時性など)、当事者の言動、主観的態様(採用に際しての使用者の雇用継続を期待させる説明など)、他の労働者の更新状況等の要素を総合して判断すべきものとされている。

【今後の問題を回避するために】
 いろいろ問題が生じやすいが、こんなところに注意したらよいのではないかと思う。

 ① 契約書については厚労省が示した基準を示しておくこと
 ② 最後の更新にあたって、更新が無いことを明示しておくこと
 ③ 有期雇用契約についての就業規則を作り、継続雇用の上限を超えた有期雇用は原則として更新しないことを明示すること

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