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№202 経営判断の原則

№202 経営判断の原則
会社法の分野では会社の責任を取締役が負担することはない。これは所有と経営とが分離しているという状態である。しかし,取締役は会社に対して忠実義務があるから,会社に対しては責任を負う。

しかし,精勤追求するのは社長だから,社長が会社を代表して責任を追及することは普通はない。そこで,株主代表訴訟という特別な制度ができあがった。株主は社長や取締役の責任を会社に変わって追及できる。

もっとも,会社に損害を与えれば,経営者としての責任をとらなければならない。これは通常,取締役会や株主総会で追及され,場合によっては経営者の更迭ということになる。そかし,それを超えて,会社が取締役に損害賠償できるかというと別問題だ。

我々の世界では「経営判断の原則」という考えがある。
これは,取締役には裁量があり,任せたのだから多少の損が出ても失敗することだってあるという考え方だ。そうでなければ,社長もたまったものではない。

ある裁判例では新規投資事業への投資行為について、取締役の注意義務は「実際に行われた取締役の経営判断そのものを対象として、その前提となった事実の認識について不注意な誤りが無かったかどうか、その事実に基づく意思決定の過程が通常の企業人として著しく不合理なものでなかったかどうかという観点から審査されるべきであり」その判断内容の当否の審査は「当時の状況を基礎とする予測的判断を用いるべきである」とした(東京地裁平16.9.28)。