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№2256 離婚を利用した財産隠し

№2256 離婚を利用した財産隠し

 財産隠しの手法として離婚して妻に財産分与であるとか養育費であるとかという名目で財産を移す場合ある。こういう話はどこまで通用するだろうか。

不法貸し付けした元取締役の責任が追及された
 銀行は元経営陣に損害賠償請求した事件がある。経営者の不適切行為について取締役個人が責任をどこまで負うかというのは「経営判断の原則」と言って,難しい問題がある。経営にはリスクはつきものだから失敗したからともかく責任を負えというのは実情にそぐわない。法は失敗はある程度までは許されるとしたのである。

離婚を利用した財産隠し
 ともかく,この事件の違法貸付けについては取締役の銀行に対する賠償責任は免れなかった。そこで,急遽この取締役は妻と離婚し,慰謝料,財産分与,養育費といった名目で8000万円の財産を妻に移した。かなり露骨な財産隠しだ。

 裁判所は本件贈与は「通謀虚偽表示」と言って,架空契約だから無効であるとした。また,財産分与などについては,「詐害行為」と言って,財産隠しを許さないという条文により,無効だとした(東京高裁H29.9.27判時2366号)。

財産隠しはかなり稚拙だった
 この事例では8000万円を妻名義に金銭を移動しているが,慰謝料,財産分与,養育費などの内訳のない合意書が作成されていた。離婚届けが出されているものの,その経過は突然だったりしている。生活状態もあまり変わっていない。裁判所が無効にしてしまったのは当然と言えば当然だろう。せめて,何か大きな生活の変化ぐらいは必要だったのではないだろうか。

最高裁の立場
 最高裁の立場は離婚に伴って負担すべき金銭の額を超えて支払った部分については詐害性があるとして取り消すという考えだ(S58.12.19判時1102号44頁,H12.3.9.判時1708号101頁)。私の経験でも経営者が離婚して財産分与と称して多額の金銭を移転した事例がある。この事件でも全額ではないがかなりの金額が取り消されてしまった。

東京高裁のマニアックな論点
 なお,ちょっと弁護士マターの議論だが,前記東京高裁は養育費の一括払いという将来の養育費の支払いという期限の利益の放棄は必然性がなく無効とした上で,一括払い部分を贈与と認定して,それが詐害性があるとした。

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