企業経営に行き詰まると経営者はだんだん目先のことしか考えなくなって、判断の合理性を失う。
仕入先や協力企業への支払いを優先しなければならないのに、銀行を先にしようとしたり、なぜかサラ金への支払いを優先させたりする。税金滞納の恐ろしさを知らないのでそっちを後回しにしたりする。
名古屋E&J法律事務所へのお問い合わせはこちら
→ http://www.green-justice.com/business/index.htm
ヤミ金にとりつかれる
こうした、精神的にもおかしくなると、経営者はついにヤミ金に手を出してしまう。金利月5分(年60%)とかいったとんでもない金利でも20日後に返せればたいした金額ではない、今をしのぐのが大事だなどと思ってしまう。
ヤミ金はめちゃくくちゃな貸し方をする
こういう連中は1000万円貸すと称して、利息や手数料を天引きし、実際には500万円ぐらいしか渡さないということもある。契約書は金額は記載されているが利息部分は白地だったりする。同じような契約書が何枚も出てきたりもする。
ある裁判例
東京高裁の事例でも、不動産経営をしていたYがヤミ金にとりつかれ、農協からの借金3000万円の返済のためにヤミ金を利用し、自己の不動産を6000万円で売却してヤミ金業者に借金を支払った。この不動産は直ちに転売されている。不動産鑑定によると不動産の時価は1億3000万円相当である。転売はもちろんあやしい。
公序良俗違反は無効
民法には公序良俗違反は無効という原則がある。
1億3000万円の土地を6000万円で手に入れたというのはいかにも変だ。借金で追い詰められていた事情もある。私たちは極端な利得行為を暴利行為と呼んでいる。裁判所は本件を「暴利行為」と判断して無効とした。
こうした連中はすぐ第三者に介入させる
ヤミ金はすぐに転売している。彼らの大好きな言葉に「善意の第三者」というのがある。彼らは第三者を装う者を引き入れ、利益をすぐに移し、被害者に追求できなくさせてしまう。
が、本件では」この転売も無効とした。つまり、ヤミ金はそもそも所有権を取得していなかったのだから、そこから勝手も所有権を手に入れることはできないと判断した(東京高裁H30.3.15判時2398号46頁)。
民法94条類推適用も争点になったが裁判所は帰責事由もなければ、Xは「善意」とはいいがたいとした。