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№1968 役員報酬に注意

№1968 役員報酬に注意

取締役会決議、株主総会決議、大丈夫?
 会社の役員報酬は原則として定款で定めるか、株主総会で決めることになっている(会社法361条)。いちいち定めておかなくても株主総会で総額を定めておけば具体的な金額は取締役会決議にゆだねることもできる(最判S31.10.5)。

 中小企業の場合、株主総会や取締役会を開かないことが多い。親族中心で会社の運営に特に異論のないような状況下であればそれはそれでつつがなく会社運営は進むことになる。しかし、ひとたび親族間での争いがあった場合には関係がけっこう泥沼化し、株ぬ総会決議や取締役会決議などが改めて見直されることになる。

たとえばこんな紛争例がある。
いずれも相続争いから派生しているぞ。
 社長が会社の土地をいつのまにか自分名義にしてしまった。社長死亡後相続人間で争いになり、自分名義にしたことが取締役会決議を欠いて違法だとされてしまった。

  役員報酬を定めていたが、親族間で内紛が生じ、株主の考えが分裂してしまった。反対派株主がそれまでの役員報酬株主総会決議を欠くもので違法であるとして報酬の返還を求めた。

役員報酬のルールは知っておこう
 役員報酬について次のようなルールなのでもし紛争が起こりそうな状況であればルール通りきちんとしておいた方がよい。
 ① 役員報酬株主総会で決める。
 ② 報酬額は総額の上限が決められていれば取締役会決議にゆだねてよい。
 ③ 個別役員の報酬を取締役会で決める場合には当該取締役は決議に参加できない。但し、役員報酬にかかわるルールを決める場合は別である。

決議を欠いた場合の対応策は?
 役員報酬について株主総会決議がない場合、さかのぼって有効とする決議をあげておく(最判H17. 2.15判時1890号143頁)。

  最高裁は東京高裁は株主総会決議を欠く役員報酬の支払いについて、原則として無効であるとしたが、株主全員の同意があると同視できる事情がある場合には無効とならないとしている(H15.2.21判タ1172号96頁)。

 東京高裁は①これまで株主が役員報酬に無関心で特段異議を述べていない事情、②株主総会開催しないことに異議を述べていない事情がある場合には株主全員の同意があると推定した(H25.8.5金商1437号54頁)。


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