№2213 中小企業の株主総会形骸化
中小企業では株主総会や取締役会が実施されていないことが多いです
そのためか,数十億円あるいは百億円単位で売り上げをあげて利益が何億円かあるようなそこそこの会社でも株主総会を開いたことがないというような会社もある。
思わぬ時に足下をすくわれます
しかし,会社法は厳格だ。普段は別にこれでも問題が起きないがひとたび問題が起こると手続きミスをつかれて足下をすくわれることがある。たとえば,事業承継が生じるときによく問題が起こる。相続問題で他の兄弟が訴えたり,雇われ社長が辞める時にオーナー家から訴えられたりする。
こんな場合は決議が必要です
例えば,会社の土地を個人所有にするような場合,重要な財産処分となりうるので取締役会の承認が必要となる。社長が会社から借り入れするような場合も取締役会の承認が必要となる(会社法362条)。自己取引と言って会社の財産を自分もしくは関係者に移す場合には取締役会の決議必要となる。競業行為を行うことも禁止されている(会社法356条)。自由に個人の利益をえるようなことをすると特別背任罪といった刑事事件にもなりかねない。
一方で,判例は例外的に許される場合を認めます
単独株主が決めれば許されるとした例
古い判例だが単独株主(私たちは一人会社と呼んでいる)が承認すれば株主総会招集手続きがなくとも株主総会は成立するという,私たちの間では重要な最高裁判例がある(S46.6.24)。これはある意味実態にそって形式的に考えすぎるなという内容を持つ。
総会はないけれどオーナーと退職金を約束した事例
こんな事例もある。原告はA社の専務取締役として経営に貢献してきた。A社は、Bを中心とする同族会社で、Bのいわゆるワンマン会社であり、同社では、過去に株主総会や取締役会を開催したことはなく、A社の運営は全てBに委ねられていた事情下で,原告とBとの間で個人的に退職金を支払う旨の合意があった。
ところが,退職に当たって,退職金が支払われなかったために,支払いを求め,判決は本来退職金を決めるには株主総会が必要だが,実質オーナーとの約束を有効と認め,退職金を拒否するのは信義に反するとした(東京地裁H6.10.31,東京高裁H7.5.25)。
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