名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№583 利益相反行為

№578 利益相反行為
 会社法356条は取締役の利益相反行為を原則として禁止している。利益相反行為はというのは条文では次のように示している。
 
 ①  取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
 ②  取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
 ③  株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
 
 例えば、取締役が会社から借入をすることは典型的な利益相反行為となる。会社の物を買ったりしても利益相反行為となる。会社に対して絶大な権限を持つ取締役が、公私を混同して会社を食い物にすることを防ぐ趣旨である。
 
 もちろん、取締役との取引が必要な場合もある。例えば、当該取締役が多数の会社を持ち、グループを形成している場合もある。そのような場合には、取締役は「株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。」としている(会社法356条)。取締役設置会社では株主総会の承認に替えて取締役会の承認が必要となる(365条1項)
 
 利益相反行為と認定されると、当該取引は無効とされる。例えば、取締役が会社に自己の土地を買わせたとしよう。社長交代により新取締役となった場合は、その無効を主張して土地を返却して、土地代金の返還を求めることができる。
 
 中小企業の場合、取締役会や株主総会があいまいなために、実際に検討すれば無効となってしまう例が多いかも知れない。もっとも、裁判例もそれほど何が何でも取締役会の承認が必要としている訳ではない。例えば、実質的に1人会社である場合には、会社のオーナーが了解してれば違法はないとする判例もある。結局、利益相反行為で守ろうとしているのは会社の利益なのだから、株主が了解すれば許されるという訳だ。