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№2201 共同経営が仲間割れしたら

№2201 共同経営が仲間割れしたら

「勝手に○○された」という問題
 親子,兄弟,友達と共同経営から仲間割れして,訴訟に発展する例もある。こういう紛争で多いのが「勝手に○○された」という形だ。もめているときにはよく顧問弁護士と相談してものごとを進めないと思わぬところで足下をすくわれる。

 「勝手に」というのはパートナーに無断でということになるが,法律上は「株主総会決議」「取締役会決議」を欠いたまま,会社を動かしたと表現される。中小企業では「決議」を軽視しているため突っ込んだり突っ込まれたりすることが多い。我々も相手を攻撃する場合にはまずきちんと決議がされているかどうか検討する。

会社の重要な財産には取締役会決議が必要です
 例えば会社の不動産を買ったり,売ったりする場合,それが重要な財産の場合、取締役会設置会社では取締役会決議が必要となる(会社法362条4項1号)。何が重要かは会社の規模や会社内部の権限分配の構成,従来の取り扱いなどが総合的に考慮される。

 水戸地裁の事例では2人で共同経営していた会社が仲違いになり,一方が一方を取締役会の決議無く会社の不動産を売却したとして,社長の忠実義務違反(無断売却が義務違反)を理由に損害賠償請求した事件がある。

 この事例,取締役会決議がないことは明らかだった。そのままでは賠償責任などが発生することになるが,実質的には2人(全株主)が関与していたため,無断とは言いがたいとした。違反行為があっても,全株主が免責すれば責任は許される(会社法365条1項参照)のでこういう判決となった(水戸地裁土浦支部H29.7.19判タ1450号240頁)。

利益相反行為には取締役会決議が必要です
 利益相反行為というのは会社と取締役との利益がそう反する場合,片方の利益が片方の不利益となるような関係をいう。例えば,社長個人の財産を会社に売却する場合が典型的だ。社長個人を受取人とする生命保険なども間接的ながら利益相反行為になる場合がある。

 水戸地裁の事例では取締役が自己の経営する不動産会社の土地を売りつけていたことから利益相反行為が問題となった。判決はこちらの法は利益相反行為となり,任務違反があるとした。しかし,価格が適正なので損害がないとした。

あら探しが「権利濫用」となる場合があります
 水戸地裁の事例は経営者の反目からあら探しして裁判する場合だったが,外にも問題点が追求されている。裁判所は,細かいことまで追求するというのは「権利の濫用」だとして無効とした。本来の目的と異なる利用方法の場合は,いくら形式的に当てはまっていても,やり過ぎだというのだ。

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