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№1779 雇われ社長の不祥事とオーナーの責任

№1779 雇われ社長の不祥事とオーナーの責任

 私たちの世界では「所有と経営の分離」という言葉がある。
 企業を所有する株主と、企業経営する代表取締役とは違う者だという考え方だ。会社が何かあっても、株主は出資金は失うかもしれないが責任を負わない。

 ホールディングスと言われている方式があって、いくつかの事業を分離して子会社化して親会社が株主として支配する方式だ。この場合、子会社は子会社、親会社は親会社と分離していて子会社に対して直接親会社が責任を負うことはない。

 一つの事業に問題があって他の事業に対する影響は少ないという点で、リスク分散の意味がある。また、子会社の社長に権限を与えることによってより自由に子会社が発展するというメリットもある。

 しかし、子会社によって会社を分割する場合、子会社の管理という難しい問題に直面する。会社オーナーの立場からすれば、何でも自分で決めてしまうタイプと、部下に何でも任せてしまうタイプとある。

 何でも任せてしまうタイプは非常に楽だし、自然とお金が湧いてくるような気になっている。もっと自由な事業展開が可能になるかもしれない。しかし、子会社の管理という重大な仕事があるのだが、これを怠ると大変なことになることがる。

 多くのオーナーは自分は代表者について役員報酬を得て、一方で子飼いの社員に会社を任せるという方式をとる。この社員の質が悪い場合、時には顧客や社員を奪って独立することがある。あるいは会社の経費を濫用したり、会社のものを勝手に
売ったりする場合がある。

 この場合、オーナーの監視責任を認め、第三者に損害を与えた場合は賠償責任を負うとするのが判例だ(最判44.11.26)。最近でもこれを任せきりにしたオーナー兼代表取締役に賠償責任を認めた事例がある(大阪高裁H.27.7.10判時2281号135頁)。

 任せきりにする場合には子会社管理規定をしっかりし、信頼できる会計士や弁護士に管理の補助を頼むなど体制を整えるべきだ。

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