名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№123 解雇の決断

中小企業法務 №123 解雇の決断

 事業主はどんな時でも雇用を確保しなければならない。雇用は労働者にとって死活問題であるから正当な理由がなければ解雇できない。そうでなくとも,事業主にとって社員は「同じ釜の飯を食う仲間」であるからそう簡単に解雇できるものではない。

 もとより,事業の継続を考えるとき,社員が定着することは非常に重要だ。社員が築き上げていく人間関係はそれ自体一つの財産である。社員がしょっちゅう入れ替わるようであれば事業の安定はままならない。人は城,人は石垣とはよく言ったものだ。信玄さん偉い!

 ところで,事業が拡大しかけたとき雇用をどうするかは非常に難しい問題をもたらす。仕事は増えていくので,その仕事を逃したくない。しかし,その仕事が安定しているとは限らない。仕事が無くなった時には即時に雇用を調整することは難しい。

 さらに,危険なのは雇用を増大することで仕事を増やすという「かけ」に出る場合だ。人が成長するには時間がかかる。人はゆっくり成長する。ところが「かけ」に出るときは,往々にして早急な成果を求める。このギャップが見抜けないと経営は簡単に破綻する。気づいたときには後戻りできないほど借金ができてしまっていることはめずらしくない。

  雇用の増大→収入が増大しない→先を期待した借金→収入が増大しない→経営破綻

 もちろん,逆に事業が縮小してきたときも同じ問題を引き起こす。大胆なリストラを行って,人員を削減するか,がまんして様子を見るかと言ったぎりぎりの決断は経営者にとって大変な過程だ。もちろん,本当にあぶないときにはリストラをきちっと行うことも経営者の任務だ。突然解雇などというのは労働者にとって最悪のパターンだからだ。