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№2425 土地境界の確定ができない土地取引

 不動産売買では土地境界を確定することが売主の義務であるが,どうしても隣地の立会が得られない場合がある。特に分筆が必要な場合,隣接土地所有者の同意のある確定測量図がないと困ってしまう。分筆はできないわけではないが,隣地土地所有者の同意というものは売買契約上どれほど重視されるのだろうか。

 
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事案(名古屋高裁R1.8.30)は隣地同意ある確定測量図が提供できないことは,契約不適合となり,解除原因ともなるという判断をした。

 

本件売買契約では次の条項が存在した。
「売主は,買主に対し,残代金支払日までにその責任と負担において,隣地所有者等の立会いを得て,資格ある者の測量によって作製された本物件の確定測量図を交付する」

しかし,売主は隣地の立会を得ることができなかった。民法債務不履行がある場合,債権者(この場合は買主)は相当期間を定めて履行するよう請求し,それでも履行されなかった場合には契約の解除ができる。手付けなどがあれば没収するか,倍返しになろうし,違約金の定めがあれば義務者(この場合は売主)は支払わなければならない。

 

売主側は定測量図に立会がなくても分筆などできるのだから問題無いとした。

しかし,裁判所は,契約上同意がある確定測量図の提供義務がある以上売主は債務不履行だとした。また,境界の同意が得られないような土地は商品価値が下がるのが通常なので,解除が認める合理性があるとした。

 

判決の結果は妥当だと思う

確かに,土地境界の争いがあると,裁判のために時間もかかるし,費用もかかる。境界画定できない土地というのは,紛争付きの土地として評価が下がるのは当たり前と思う。判例はまっとうな結論ということになる。

 

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