名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№1248 履行を拒まれた場合の責任

№1248 履行を拒まれた場合の責任
 建物の売主が、修繕義務あるから修繕しようとしたところ、それを拒まれた場合、売り主にはなお修繕義務があるだろうか。修繕しないことについて損害賠償責任を負担するだろうか。この場合、売主としてはやるべきことをやっており債務不履行責任を負わない。

 事例はこうだ。
 平成23年2月20日、買主は千葉県内の土地、建物を購入する契約を締結した。
 3月11日、東北大震災が発生し、地盤は液状化して建物が傾いてしまった。
 3月26日、建物が傾いたことを知らず、建物は引渡された。

 建物が傾いたことの責任は誰がとるのだろうか。
 建物が傾いたこと自体は天変地異に由来するものだから、誰の責任でもない。民法の原則に従えば、債権者、つまり買主が負担することになる(民法は534条)。買主は傾いた家を引き取らなければならない。ここは民法でもいろいろ議論のあるところだ。

 本件では引渡前までに天変地異による瑕疵、欠陥が生じた場合には売り主が修繕するという約款がついていた。そのため、この傾きについては原則として売り主に修繕義務があるということになる。

 売り主は約款に従い、傾いた家修繕すると申し出たを週zせぬsる乙修繕するとこの事例で興味深いのは売主が修繕しようとしたら、それを買主が拒んでしまったという点にある。

 修繕義務は契約上の義務だから、この義務が履行されていないという。
 判決は修繕しようとして何度か申し込んだのだが、買主が修繕内容が気に入らず、これを拒んだことを取り上げ、売主に賠償責任、債務不履行責任は無いとした(東京地裁H25.1.16判時2192号63頁)。

 約束したことが守られなければ債務が履行されていないとして、債務不履行の損害賠償責任が生じる。この場合、損害賠償責任が発生するためには義務者、つまり売主に帰責自由が必要とされる(最一判S52.3.31判時851号176頁)。つまり、落ち度と言われるものが必要だ。

 売主がとにかく履行したいといっているのにやらせないのだから、売主に落ち度はない。つまり帰責事由はない。そこで、賠償責任は否定されることになる。

 ただし、この場合、修繕義務は残っていることには変わりない。金銭での賠償責任は無いということである。