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№2426 創造性は競争では作れない

 今月号のハーバードビジネスレビューは最初の原稿は「イノベーションコンテストで競争を煽ってはいけない」というものだ。競争が過ぎるとパフォーマンスが低下するという実験結果が報告されている。確かに,東大生より京大生の方が創造的だという仮説が成り立つかもしれない。

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オープンイノベーション

 オープンイノベーションという言葉が使われて久しい。Webが発達して世界のあらゆる場所のアイディアが相互に交換され,よいアイディアはまたたくまに広まっていく。そんな中,一社内でアイディアを育てていては世の中の進歩に追いついていけない。もっと広く世界からアイディアをもらわなければならないし,そのためには自分も放出しなければならない。これがオープンイノベーションのアイディアの核心だ。

 

アイディアが競い合うと創造性が下がる?

 それならば,もっとアイディアを出し合うようなコンテストはより創造的にならないか,他者のアイディアを目にすると,それを活かしたり新しい方法で組み合わせたりすることができるのだから,イノベーションは促進されるはずだ!と考えられていた。しかし,Hofstetterさんの研究では必ずしもそうはならなかった。

 

「差別化」という意識がイメージを制約させる

 アイディアを10個見せたグループと2個見せたグループとでは後者の方がパフォーマンスが高かったようだ。競争がある場合,「他の参加者のアイディアを見ると,先行するアイデアの要素を利用することではなく,自分のアイディアをそれらと差別化することに集中してしまうため,このプロセスが滞る」という。つまり,「差別化」という意識が思考に垣根を作ってしまうというわけだ。

 

創造性は模倣から始まる

 確かに,独創的なアイディアは真の意味で独創的というよりは,何かの到達点に何か一つ付け加えるところに生まれるのかもしれない。モーツァルトは模倣の天才だったとは小林秀雄言葉だ。万有引力で有名なニュートンは自分は巨人の肩にのった子供にすぎないと言った。つまり先人という巨人の肩に乗ったおかげで少し遠くが見えたのだということだ。

 

「差別化」をはき違えるな

 ホフステッターさんの研究は私たちに「差別化」の意味を改めて考えさせるし,オープンイノベーションがなぜ創造性を発揮するのかをよく考えてみる必要がある。おそらくこれはイノベーションを共に生み出したいと願う人たちのコミュニティがあって,それがアイディアを競いあうのではなく,積み重ね合うような現象の中でアイディアが生み出されているのではないかと思う。

 

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