京セラ稲盛氏の京セラフィロソフィでは「人間として何が正しいのか」というプリミティブな基準で社員は行動するよう求めている。それは自分を離れ、人のために働くという「利他の心」でもあるという。
忘己利他
この二つの考えは実に奥深い。稲盛氏は仏教徒なので「利他」は最澄の「忘己利他」からきているのだろう。ともかく、自分から切り離して、「利他」の気持ちで眺めてみれば、それまで見えない世界が見えてくるのは間違いない。
経営者は自分を離れて会社の声を感じ取る
経営者の場合、常に会社がどのようになっているか感じ取る力が必要だが、自分中心の狭い世界からいったん自分を開放して組織の声を聞くことによって、いま組織が何を求めているか見えてくることがある。社員だって同じだ。自分中心の狭い世界から一定距離を置き、自分の置かれている世界を俯瞰すれば、周りがどのようになっているか、自分が何をするべきか見えてくる。
自分中心の発想は他人からの攻撃を意識してしまう
「自分の要求を衝動的に満たそうという状態をうまく抑えられるような習慣や仕組みを習得すると、」自分のエゴ(恐れ、野心、願望)が「いかに自分を突き動かしているかが見えてくる」。この自分のエゴ(自我?)を切り離すと「私たちはほかの、自分自身の深い部分にある知恵に耳を傾けられるようになる。」(「ティール組織」74頁)
つまり、自分だけが利益を得たいとか、人を支配したいという自分中心の発想は時に組織をゆがめるし、組織の混乱は結局は自分の不利益として返ってくる。他人も自分のために利己的に動いているだろうといったん思うと、我々は相手に対して抜きがたい不信にとらわれる。そのような世界に身をおけば、私たちはさぞかし不幸なことだろいう。
エゴから離れて周りを俯瞰する力が大切
エゴから離れて俯瞰するとはとても重要なことだ。一方で私たちはその時に何を頼りに判断したらいいのだろうか。京セラフィロソフィでは「人間として何が正しいか」を基準にするという。私たちが子供のころにおそわった簡単な道徳だ。子育てでも子供たちに難しいことは言わない。「人として正しいか」を基準にあいさつや思いやりを教育する。
未来の豊かさを信頼する能力
エゴが現れた組織にかわる組織の理念は「人生の豊かさを信頼する能力」の涵養であり、「進化型組織では、意思決定の基準が外的なものから内的なものに移行する」「『この判断は正しそうか?』『私は自分に正直になっているか』『自分がなりたいと思っている理想的な人物は同じように考えるだろうか?』『私はこの世界に役に立っているだろうか?』を重視する。」(「ティール組織」75頁)
長所を見る習慣が会社を成功に導く
このような「利他」の心、「エゴを切り離す」と、欠点を見るのではなく長所を見る習慣が身に付き、組織が抱えている危機、組織が発展しようとしている未来も見えてくる。社員も同じく、自分がかかえている問題点、自分が組織の中でどのように成長発展しようとしているかも見えてくる。そして、多くの組織はそのような文化を形成することによって成功を収めている。
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