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№2342 正規、非正規の差異は細かな点まで合理性が必要

 正規雇用と非正規雇用の格差をなくすため政府は「同一労働同一賃金」を目指して「働き方改革関連法」を成立させた。日本的にはこれは同一職場における格差の是正を言っている。パートでも同じ仕事をしていれば同じ労働条件であるべきだという考え方だ。

判例の考え方
 ハマキョウレックス最高裁判決(H30.6.1判時 2390号96頁)ではトラック運転手の労働条件が有期雇用と無期効用と格差があるとして、「期間の定めがあることにより」不合理な区別することを禁じた労働契約法20条(平成30年改正前)違反となるか問題となった。

 

 判例は「期間の定めがあること」による差が不合理な差となるかどうか、事業者に一定の裁量を認めつつ、基本給、所定当てなど個別に判断するべきだとした。

 

基本給
 しかし、同じと言っても職責(責任の範囲)、異動(カバーできる職務の範囲)によって差異をもうけることは許される。たとえば、正規雇用の場合、長期雇用を前提としていて将来の昇格、昇給が想定されているうえ、広域異動が想定されているので、合理的な違いであるとした。

 

皆勤手当
 作業を確保するための手当であるから、期間による差別に合理性はないとした。

 

無事故手当
 「優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼の獲得を目的として支給されるものである」から差別は不合理とした。

 

作業手当
 作業手当は特殊作業を行ったことに対する対価と認定し、正規、非正規同じ仕事をしている以上、等しく与えるべきだとした。

 

給食手当
 勤務中に食事をとることがあることから支給される手当と認定し、差別は違法とした。

 このほか、住居手当の差異は一定合理性がある、通勤手当は合理性がないとした。

 

働き方改革関連法
 今回、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の3法を改正した。大企業、派遣事業者については2020年4月から、中小企業のについては2021年4月から適用される。この法律によると、基本給、賞与、諸手当、福利厚生施設の利用などすべてに差異あることが合理的かどうか問われることになる。

 

説明義務が強化された
 このように細かな点まで差異が合理性を有するかどうか検討しなければならないが、さらに求めがあった場合に、その差異の合理性があることを説明しなければないとしている。だから、経営者としてはかなり細かく検討せざる得ない。

 

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